おやじさんたちは一時間もしないうちにやって来た。もちろん、妹も一緒に来た。気をきかせて昼飯まで買って来てくれた。妹は華ちゃんをオモチャのようにたかいたかいをしたり、散々いじりたおしたあげくグズった華ちゃんをおやじさんに押し付けた。だがおやじさんは上手にあやして遊んだり世話してくれた。おれはそんな二人の姿を夢中で写真に撮った。
何だろう? この今まで感じたことのない愛しさと切なさ。そして温かくて穏やかな気持ち。華ちゃんの面影を忘れたくなかったからできるだけ沢山の写真で残しておきたかった。今この瞬間だけはおれの子のように思えた。
昼になったので四人で飯を食った。二人はさっさと持って来た弁当を食っていた。おれは華ちゃんにミルクをあげたあと、飯を食った。その間におやじさんは、華ちゃんの月齢なら食べられるだろうと買って持って来ていた離乳食を器に出していた。野菜のスープだった。器に移しスプーンを持って待っていた。おやじさんはおれから華ちゃんを抱き取り、膝にタテ抱きにして左手で抱え、右手で持ったスプーンで離乳食を少しだけすくい、華ちゃんの口元へそっと運んだ。
初めてなのだろうか、華ちゃんは不思議そうな顔をして口をゆっくり動かして飲みこんだ。気に入ったようでアーアーと声を出してほしがる仕草をして見せた。おやじさんはその様子を見て華ちゃんにヨダレかけをさせて、おれに代われと言った。おれもおやじさんのようにタテ抱きにして食べさせた。華ちゃんはすっかり気にいって夢中で食べてくれた。そして食後に清涼飲料水をあげると特大のゲップをして満足げな顔をして笑ってくれた。
常時、萌気味だった妹に抱かれながら華ちゃんは眠ってしまった。オモチャで遊んでやりたくなったので、おれは二人に華ちゃんを任せてオモチャ屋さんへ行った。華ちゃんがどんな物で遊ぶのかわからなかったけど、大きな物は買わないと決めていた。華ちゃんが帰ったあとも家に置いておくつもりだったからだ。華ちゃんは腹ばいのとき、手元にある物を何でもよくいじっている。そのときに遊べる物をと考えていた。小さなウサギのソフビ人形で握るとピーピー鳴いて、振るとカランコロンと鳴るものにした。
買って帰る途中、華ちゃんと同じくらいの赤ちゃんを抱っこして歩く男の人を見た。少しだけ羨ましい気持ちになった。あの人はその赤ちゃんとずっと一緒にいられるんだろう。