赤ちゃんと過ごす二日目
午後は華ちゃんの服を買い、二人で写真を撮ることにした。駅前に赤ちゃんや小さい子供の服を安く売っている大型チェーン店があったことを思い出したからだ。リュックに華ちゃんセットと抱っこヒモと財布を入れ背負った。そして、華ちゃんをベビーカーに乗せて駅方面へ歩きだした。
新緑が目に優しい季節になっていた。どこからか飛んできたのか桜の花びらが華ちゃんの額に落ちた、愛らしい♡もしかしたら、華ちゃんの手に付き口に入り食べてしまうかもしれないが……それもおれだけの大切な思い出になるだろうし、花びら一枚で腹をこわすこともないだろう。万が一、腹をこわしてもおれが一晩看病してやる。
それもおれにとっては良い思い出になるだろうとそのままにして歩き続けた。こんななんでもない一瞬でさえ掛け替えのない時間に感じられた。今まで何気なく眺めていた街の風景も色がついたように新鮮できらめいて見えた。
華ちゃんはまだ話したり甘えたりしておれの感情を激しく揺さぶることはしない。ただ淡々とお世話されて泣いたり笑ったりして一緒にいるだけなのに、おれは華ちゃんに変えられているようだ。たぶん、華ちゃんだけの力ではなくおやじさんや妹やおれを気にかけてくれる全ての人たちのおかげなんだろう。
今なら誰かと結婚して急に一児のパパになっても何の不安もなく自分の子を育てる自信がある。きっと子育てにはまだまだおれの知らない大変なことが沢山あって、もしもこのまま華ちゃんを育てていかなくちゃいけなくなったら今感じた自信なんて簡単に崩れるだろうということも想像できた。それでも今こうして華ちゃんといる幸せで温かな時間とこの感情が強い自信に繋がっているように思えた。