オンライン追悼会
晃はなおも刑事に食らいついた。
「もし何か引っ掛かることがあったんならどうして今までにそう発表しなかったんですか?」
「今も申し上げたように署の方針だったんです。うちの管轄では去年の暮れはそうでなくても女子大生の強盗殺人事件やスーパーの買い物客の連続ひったくり事件などで手一杯でした。それになるべく世間の好奇の目にさらされたくないというのがご遺族のご意向だったものですから。あれから半年経ちました。
今はコロナウイルスのせいでこちらも思うように動けません。しかしこの間軽犯罪や強盗、空き巣は平常時より約二〇%も激減しました。この機を利用して一気に捜査を詰めることが出来ればと思っているんです」
再び晃が言った。
「あなたはどうしたいんですか。もう一度騒ぎ立てて事件をかき回して世間の注目を浴びたいんですか?」
「誤解されては困る。私はただあの時納得のいかなかったことを整理して胃袋にすとんと落としたいだけです」
「それはあなたの胃袋の問題でしょう。僕の胃袋はすっきりしています」
初めは故人を懐かしむ会として始まったのに全く予想外の展開になってしまった。
松野が慌てて追悼会を締めくくりにかかったが始めた時とは裏腹にいやな後味を残してオンライン追悼会は幕を閉じた。