アパートの中庭には、同じ年齢くらいの子どもがお母さんと遊びにきていた。旦那さんの転勤で和歌山県から引っ越してきたという仁科幸恵と、隣の町からきたという生田節子と親しくなった。
節子はアパートの近くに自分の両親が土地を買ってくれたので三年後には家を建てる予定だという。幸恵はお菓子作りが得意で、時々家に招いてくれた。
土曜日には、恭一と二人で樹里を連れて車で十分ほどのところにある公園に行った。緑が多く、動物園やプールも併設している憩いの場所だった。アパートの周辺は住宅街で、歩いて行かれるスーパーや公園もあり恭一も結里亜もとても気に入っていた。
分譲地を見に行ったが、売りに出ている土地はなかなか見つからなかった。
結婚当初から、週末は夕食の買い物をして恭一の実家に行った。結里亜が夕食の用意をして義父母と一緒に食べる。その日に帰ることもあるが、時には泊まることもあった。毎週行くのは気が重かった。
「ぶどうの時期は、平日もごはんを届けてほしい」と恭一に言われ、結里亜は仕事から帰ってきてから、夕食の用意をして、それをタッパーや箱に入れて運ぶ。茶碗蒸しや煮物、揚げ物などはりきって作った。
時には、幸恵が「おでんや煮物を作ったから持っていって」と届けてくれた。仕事で帰りが遅い時などは本当にありがたかった。
結里亜と同じ頃に麻彩も結婚し埼玉県に住んでいる。相手は職場の同僚でおだやかな人だという。二年後に家を建てる予定らしい。
今は義理の親と別々に暮らし、週末は実家で食事をするという。
「結婚して二年半になるけど未だに食事の用意はお義母さんがしてくれるの。朝食は私も作るけどね」と麻彩。
「うらやましいな!」と結里亜が言うと「一緒に作るって言ったんだけどね、お義母さんは、お料理が好きだし、麻彩さんたちに会うのが楽しみだから、ごはんを食べにいらっしゃい」って。
「そういう家もあるんだ」と結里亜。
「申し訳ない気もするけどね。だからお義母さんが好きそうなお菓子を買って行くの」と麻彩。
独身の頃、麻彩の失恋談を聞いていたので、うれしそうな顔を見ると、結里亜は自分のことのようにうれしかった。