「ユウ、そろそろ教えてよ」
酔っ払った女は、甘ったるい嬌声をあげながら、森の腕に両手を回した。
「うるせえな。話の途中じゃねえか。おい、離せって。エリカ」
酔っ払ったエリカという若い女は、座っていても長身であることがわかった。鉤鼻とエラが目立つせいで、加工されたような目の大きさは、そこまで際立つものではなかった。森はおそらく十も年の離れた若い女に、なぜかユウと呼ばれていた。
エリカは、化粧品冊子やファッション雑誌をドサッと机に急に落として置いた。そして森の腕を再びつかんで離さなかった。そしてその手は顔や胸や足や下の腹を、いったりきたり何度もするので、それを見て嫌悪した。
隣にはもう一人の女がいる。大人しく携帯電話を触っていて、その画角からは何匹もの犬が、入れ代わって動いている。
「ニシといいます。よかったらで。仕事は何を?」
「トリマーをしています。ナツといいます」
女はニコッと優しく笑った。あまり二人の姿や動きに関心がないようで、エリカと違って化粧っ気もほとんどなかった。薄っすら覆う瞼の中には、硝子玉のような瞳が隠れている。膨れた小鼻は柔和な表情を引き立てているように見えて、調和に富んだ表情に見えた。そしてエリカと違って小柄だった。