エッセイ 『ねぇねぇみかどのおばさん』 【第3回】 六谷 陽子 不良とつるみ始めた近所の男の子…。駄菓子屋のおかみが決行したのは「えこひいき」作戦!? 一 みかどを閉店します富山の片田舎から下町に嫁いだ頃は、母も人間関係で苦労したようです。当時は、各家庭には水道は通っておらず、共同水道を十世帯くらいで使っていたのです。そこに行けば、他の誰かが必ずいます。特に水を使う時間帯は同じだから、会わずにすませる、というわけにはいかなかったようです。年配のおばさんたちは、個性的で嫌味を言う人もいれば、優しい人もいます。年配らの会話を笑いに変えて楽しむ若妻も…
小説 『赤い靴』 【第7回】 高津 典昭 泥酔漂流事故は一瞬にして人口僅か213人の島の隅々にまで知れ渡り「島の恥」と陰ではささやかれ、学校では「酔っ払いの子」といじめられる辛い日々 ところが、世間が許さない。ここからこの家族は転落していく。転落させた張本人は祐一である。沖ヶ島は人口僅か213人の小島であり、絶海の孤島だ。絶海の孤島であるが故に、二つしかない集落では、祐一が引き起こした泥酔漂流事故が一瞬にして島の隅々にまで知れ渡った。この先もずっとこの島で生きていかなければならないのに、島民はみんなが思っていた。泥酔して漂流して世間を騒がせたことに憤っていた。漂流は船の故障な…