4デジタル社会のリーダーには誰もがなりえる
すでに紹介したように、オードリー・タン氏は8歳でプログラミングを始め、19歳のときシリコンバレーでソフトウェア会社を起業しました。
デジタル社会におけるリーダー像は年齢や学歴、性別、人種といった、従来の価値に縛られる必要がなくなってきています。それを実感できる出来事を紹介します。
2020年6月11日にネットニュースで流れた9歳の白人の男の子の話です。彼はシカゴに住んでいました。ある日、近所の歩道の上に、チョークでたくさんのハートの絵を描き始めました。
〈EYEWITNESSNEWS〉によると、エイデン君はハートを描くことで、愛と友情のメッセージを伝えたかったのだそうです。
「僕もみんなのように(黒人差別に対する抗議活動を)支援したかった。でもここ数日、本当に大変なことが起きていたから、やるならみんなが幸せな気持ちになれる方法にしたいと思ったんだ」と自分の行動の理由を話したそうです。
また絵を描くだけでなく、ニュースで見た映像を真似て、自分で作った「#BlackLivesMatter(黒人の命は大切)」のサインを掲げ道路に立ちました。そんな彼の姿を見た近所の住人が写真をTwitterに投稿し、その投稿には68万回以上もの「いいね!」がついたそうです。
さらにエイデン君は、近所の人たちにも参加を求めて声をかけ始めました。「サインを掲げて、大勢の人に見られるだけっていうのは違う気がしたんだ。僕が道路に立つことで集まってくれた人たちに声をかけて、もしみんなも絵を描きたいと思ってくれたなら、そのほうがいいと思って」
エイデン君の行動の根底には「誰もが(社会から)大切に扱われてほしいし、違う扱いを受ける人がいてほしくない」という思いがあるのです。
実は、道路に絵を描くという行為は、エイデン君の母カーチャさんが近所の友人から聞いたアイデアでした。それをエイデン君に伝えたところ、彼はすぐにチョークを持ち出して道路に向かったそうです。
そんな息子の姿を見てカーチャさんも「彼の情熱が、変化を起こすきっかけになれば」と感じたとインタビューに答えています。
この記事から、オードリー・タン氏がデジタル社会で求められるとする①自発性、②相互理解、③共好(共有できる価値創造)の3つの素養をエイデン君もエイデン君のお母さんにも感じ取ることができます。それだけでなく自らの「理念・信条・方針」を持ち行動しており、サーバントとして導くリーダーシップがみてとれます。
グリーンリーフが定義としてあげた「奉仕を受ける人たちが、人として成長しているか。奉仕を受けている間に、より健康的に、聡明に、自由に、自主的になり、自らもサーバントになる可能性が高まっているか」を体現しているといえるでしょう。
この本を手にしているあなたは、これから成長していくエイデン君の立場かもしれませんし、あるいはエイデン君のお母さんのように、成長を支援していく立場の管理職(マネジャー)かもしれません。二人以上集まれば、組織であり必ずリーダーとフォロワーが存在します。
様々につながることが可能なデジタル社会では、あなた自身が望めば、リーダーとなりえるし、フォロワーにもなれるでしょう。