【前回の記事を読む】3人同時に”ポジティブ”な退学宣言⁉ 「前例がない」はチャンスだ…
人たらしなんて最高の褒め言葉 他の人がやらないことをあえてやるだけ
そうだ、今も忘れはしない、僕が初めてブチ切れたエピソードがある。アルバイトしていた焼きとり屋では食後にゲストにアンケートを書いてもらっていた。料理の美味しさや接客、提供スピードや清潔さなどといった項目に点数をつけ、最後に一言コメントと一番接客の良かったキャストの名前を書いてもらう、というアンケートだ。そして書いてもらったアンケートの住所宛にクーポン付きのダイレクトメール(DM)を送るというお店のルールがあった。
多い日で一日に四〇枚〜五〇枚にもなったりする。それらを閉店後キャスト皆で手分けして返事を手書きで書いてその日のうちに投函する。慣れないうちはなかなか大変なことである。
そんなある日の営業終了後、僕は皆が書いたハガキを集めてポストに投函する前にチラッと見て愕然とした。アンケートのコメントに対するハガキなのにすべてコピー&ペーストの定型文だったのである。
「焼きとり美味しかった! また来ます」に対して「ありがとうございます。またのご来店お待ちしております」「店員さんの接客がとても気持ちよかったです」に対して「ありがとうございます。またのご来店お待ちしております」「野菜串が品切れで残念でした。もう少し数を増やしてほしい」に対して「ありがとうございます。またの……(以下同文)」さすがに最後のはないだろ! とその場でツッコミを入れたかったが目の前にいたのは無機質なポストだった。
翌日、僕は全キャストに対してキレ気味で言い放った。
「せっかくゲストがわざわざ書いてくれたアンケートだよ。誰に対しても同じ文章書くなら手書きの意味ないじゃん。コピーで十分でしょ。今日から全部俺が書くから皆は書かないでいいよ!」
その日から僕はのけ者になり、全員からハブられた。
「何あいつ一人で熱くなってんだよ」
ってそんなところか。僕も僕で偉そうに言い放った手前、長時間かけてハガキを書いた。一人ひとりのコメントに対して一人ひとりに言葉を返すように感謝の気持ちを書いた。これはさすがに大変だった(笑)
それから数日が経ち、この状況を見かねた店長が間を取り持ってくれて、皆と話し合いが設けられた。話し合いで分かったことは接客で常にゲストと接していた僕とキッチン側で黙々と料理をつくっていたキャストとでは熱の込め方が違ってるということだ。当然だった。反省。しっかりと意義目的を説明して皆が手書きに楽しんで取り組むようになった。
その結果、どうなったのか。ハガキの回収率(店舗に持参していただける割合)が格段に上がって売上も伸びた。また、ホール側の人はキッチン側に
「あのゲストさん、今の釜飯とても美味しかったって言っていましたよ!」
「全部残さず食べておられました! 嬉しいですね!」
なんて伝えるようになった。これから店内の雰囲気も一段と良くなっていった。