【前回の記事を読む】障害がある人の手伝いをするはずが…「むしろ見張られてるように感じた」。

UDを考える順番

高校の出前講座では「障害者という事ではなく『多数派少数派』と考えてほしい」と伝えています。例として、右用の鋏は多いが左用の鋏は少ないと話し、「好きなものが選べない少数派の事を考えてね」と話します。未だに入り口に階段のある店は数多くあります。それは歩ける人という多数派だけの街づくりをしてきた名残りです。少数派の「階段を上れない人」の事は、考えもせずに造ったのでしょう。

誰にも幸せになる権利があり、好きなものを選びたいのは同じです。車いすの人が入れるバリアフリーの店が「中華」だけなら、今日は「イタリアン」という気分の時に好きなものを選ぶ事ができません。少数派の人たちを障害者の枠に入れておいて優しくするのではなく、少数派の人も多数派と同様に好きなものが選べる世の中にしましょう、という話を高校生には伝えます。

アリコさんはよく、「優しい社会になるとええね」と言います。間違ってはいないと思いますが、困っている人に優しくする前に、困る事を減らすための、ハード整備を一番にすべきです。その次が、いつもそこにいるはずの店員さんや駅員さんによる、障害理解を踏まえたサービスの提供です。そして三番目に期待したいのが、一般の人たちによる親切です。

建築用語で「不特定多数」というのは、どんな人がやって来るかわからない店や建物を指します。この不特定多数が利用する建物では、バリアフリー化が義務になっています。ハードの整備が義務化される建物は、法律が変わる度に増えています。まだまだ時間はかかりますが、確実に世の中は良い方向に向かっています。