【前回の記事を読む】「障害がある人と友達になれ」?僕は動物園のポニーじゃない。
お手伝いをする時の距離感
以前のライブで涙したアリコさんに、わけを聞きました。
「自分の事しか考えてへんで、配慮もせんと生きてる自分に気づいてショックやってん」と言いました。
点字があれば、視覚に障害がある人が理解できると思っていた事、点字ブロックの上に何気なく立っていたかもしれない事などを反省し、「もっとお役に立ちたいと思ってん」と言いました。
素敵な人ですね。私たちは誰かの役に立つ自分でいたいと思います。でも果たして相手はそれを望んでいるか? お役に立てるシチュエーションとは何か? という事を一緒に考えたいと思い、もし目の前に車いすの人が、ちょっとした段差で困っていたらどうするかと彼女に尋ねました。
「お困りですか?」と聞くと答えたので、困ってへんわと言われたら? とまた尋ねました。
彼女は、「じゃぁお気を付けてと言って、振り返りつつその場を去るかな」と言いました。
よくあるシチュエーションです。お手伝いしたい側は車いすの人を見ると車いすの人だと、ほんの少し相手の事を知っている状態になります。でもあちらにしたら、こちらの事なんか視界の片隅にも入らない。その段階で急に「お手伝いします!」モードで近寄って来られたら、「え、どなたですか?」と驚いて、反射的にお手伝いを断ってしまうかもしれません。
ある店員さんが、「お声がけをしたら、強い口調で拒否されたので、二度とお声がけする気になれません」と言いました。私はその店員さんに、「まず自分の事を名乗りましたか?」と聞きました。
あちらに余裕があれば、相手を見極めてこの人ならお願いしてもいいかなと考えられるでしょうが、知らない人に急に良い事を提案されても、疑ってしまうのが人の常です。信頼関係を築くには少なからず時間が必要なので、自分がお手伝いをする立場にある事や、お手伝いをする気持ちや時間がある事を伝える必要があります。
これは片方から手を差し伸べた状態で、あちらがこの人にはお願いしてもいいと判断し、差し伸べられた手を取った時に、ようやくお手伝い関係は成立します。