【前回の記事を読む】「健常者」「障害者」ではなく「多数派」「少数派」で考える。
UD学校出前授業
小学校の4年生に、UD学校出前授業をしました。まずUDって何? と話した後で、実際に障害当事者が乗っている車いすを押す体験をしてもらいました。
最初に私が、世の中にはいろんな人がいると伝えます。右利きや左利きの人、目が見えない人や耳が聞こえない人、外国の人など、テレビで見ただけでもよいので、出会った事があったら手を挙げてねと、動きのある話をします。そして牛乳パックの凹みや缶ビールに点字が付いている事などの身近なUDの写真や実物を見せます。せっかく敷設された点字ブロックの上に、自転車を止めないでねとも話します。
みんなも年を取れば、耳が遠くなったり目が見えづらくなると話しても4年生の子どもたちには実感が無いので、「校長先生がお年寄りになっても暮らしやすい世の中にしていこうね」と話します。
この学校は、昭和29年に建てられた国の登録有形文化財に指定されている平屋の木造校舎だったので、「エレベーターが無いと上る事ができない教室が一つも無いから、元祖UDの素晴らしい学校だね」と話しました。
この時は、この学校の近くに住む脳性麻痺のメンバーと一緒でした。彼には言語障害があり、話す言葉は聞き取りづらいのですが、彼は言語障害の事も知ってほしいとの思いで、自分で自己紹介をしました。その後、介助者と共に彼が囲碁などをするために外出する写真を見せながら、彼が作った文章を代読しました。
話の次は、車いす介助体験です。体育館に厚み3センチくらいの体操用マットを敷き、数人の生徒に、車いすを押してマットを乗り降りしてもらいました。車いすに乗っているのは、本物の障害者です。上手にできないとガタンという音がして、体験をしている子も見ている子どもたちも驚きます。彼には何度もマットの上を行き来してもらったので、目が回らないかと気の毒になりましたが、ニコニコと、子どもたちと楽しそうにコミュニケーションをとっていました。
授業を始める前の子どもたちは、彼を遠巻きに見ているだけでしたが、終了後には数人の子どもが彼に駆け寄っていきました。私は、障害がある人を身近に感じてほしいと思っています。私たちが彼と楽しく会話をしている姿や、それぞれに役割を担う姿を見せる事が大切だと思っています。
この日も最後には、「手伝ってほしい方法は人それぞれ違うので、まずは聞きましょうね」と伝え、咄嗟の場では緊張して声が出ないといけないので、みんなで「お手伝いしましょうか」と言う練習を大声でして終わりました。アリコさんは、そんな体験ができた子どもたちは幸せだと言いました。この方法が正解だと思ってはいませんが、「もっとあちこち行ってください!」と強く背中を押されました。