小説 『春のピエタ』 【第18回】 村田 歩 私の妹は、5年前に殺された。高校二年生だった。自宅のすぐ傍で車の中に引きずり込まれて、河川敷まで連れて行かれ… 「早い時間ならお客さんはいないと思ってたのに、本当にすみません」「ああ、いいのよ。若旦那は特別なの。昼の三時には仕事終わっちゃう人だから。それにわたしのお客じゃないしね」意外に屈託のない話し方であたしに座るように促すと、自分も隣に座り、長い手を伸ばした。「ちょっと、あそこの神林さんのバランタインで一杯作って」バーテンの男性に命令する。こういうお店は経営者の次に偉いのはホステスさんなのだろうか。佳…
小説 『迷いながら揺れ動く女のこころ[人気連載ピックアップ]』 【第8回】 松村 勝正 男女の仲か。――「深夜、主人の部屋から話し声が聞こえて。それから主人と家政婦さんを観察すると…」と友人が話して… 【前回の記事を読む】「主人の体にふれる機会も少ない。私はただの同居人…」新婚生活を友人に打ち明けた側から結衣が「独身者は若く見えるよね。子供の世話なんかで生活の疲れが表面に出てこないから」と口を挟んだ。花帆が「美代子は家政婦さんが入浴介助することに嫉妬しないの?」「全然」と言ってから先日の入浴介助の失敗談を面白可笑しく話した。「もう一件、美月さんの触覚に触れたことがあったの?」「その他に何があっ…