はじめに
私は幼稚園児から高校生まで多くの子ども達と触れ合っていくうち、まずはその子の良さ、持ち味はどこなのか、それを認めることが学習のスタートだと考えるようになりました。初めて会った子ども達に、私は「将来みんなは日本だけでない、世界中に羽ばたくに違いない」と言います。
大人はそんな大それたことと思うかもしれませんが、子ども達の何の曇りもない嬉しそうな目、目の前の私を見ているようで実はその先の遠くを見つめる目を見ていると、私は子ども達に無限の可能性を感じるのです。
どんな子にも強く願うのは子ども一人ひとりの「将来の幸せ」です。「この世に生まれて良かった」。そういった気持ちを持って生きていって欲しい。成功も失敗も幸せになるための練習。長所はもっと伸ばせる、短所は長所にできる。そう信じて「将来の幸せ」に向かって生きていく。学習することで、そのための力をつけて欲しいと考えます。
私も、我が子がこの世に生まれた瞬間、親になりました。「子が元気で生きている」、はじめはそれだけで良かったのです。しかし、子どもが大きくなるに従い、周囲の情報や他の子ども達との成長の違い、自分のプライド、様々な要因で多くの感情を持つようになりました。時にはイライラしたり悲しくなったり、悔しくなったり……。
私に転機が訪れたのは子どものアメリカンフットボール部の試合を初めて見た時です。我が子は、ボールを持って走るメインの選手の周囲に相手の選手が近づかないようひたすら相手を押すことだけに徹し、試合中一度もボールに触れることはないポジションでした。その姿を見た時、私は涙が止まりませんでした。目立つ役割ではないけれど、チームにとっては必要だと思えたからです。
広い視野で考えれば、世の中においてもたとえ陰からでもその人にしかない役割に最善を尽くすことこそ意味あることだと感じたのです。私の中から生まれたのだから私の子はこうでなくてはいけない、といった私の狭い尺度が覆され、実は私にはないもっと重要なものを持って生まれてきていた、それに気づいて認めることが私のすべきことだったと反省しました。
中学、高校、大学合格が全てのゴールではなく、元気に社会に飛び出していくことが目標です。そういった長い目で見た力こそが「生きる力」に繋がるのではないかと思うからです。どんな時も明るく前向きに進むことができるよう大人が導き、自分の信じた道に自信を持って進む。そこに必要なのは「自己肯定感」。
「自己肯定感」は多くの愛情を受けた中から生まれるはずです。愛情を受けたからこそ他の人へも愛情を注げるようになる。私達も愛情を注ぐ一人として、子ども達一人ひとりに向き合い、この時代、この環境に合った取り組みを進めて参りたいと思います。
藤井道子