のぞみの結末

13

「あれ、あかねさんじゃないですか」

スクランブル交差点で信号待ちしていたあかねが振り向くと、そこには見知らぬ男の笑顔があった。あかねは微笑みながら男の顔をじっと見つめた。

「どこかで会いましたっけ」

「えっ、淳美さんの友達のあかねさんですよね。あっ、そうか。僕たちはまだ直接会ったことがなかったんでしたっけ。いや、淳美さんからはよくあかねさんの話を聞いていたし、写真も見せてもらっていたものだから、初対面って気がしなくて。失礼しました」

男の声にはどことなく心を落ち着かせるリズム感があった。

「あら、そう」

「仲谷春樹と言います。淳美さんとは陶芸教室で知り合いになって、たまに食事にも行くことがあるんです」

「へえ、淳美からはそんな話聞いたことがなかったわ。で、あたしのこと何て言っていました?」

「こんなところで立ち話もなんですから。もしお時間があったら、どこか落ち着いた場所で話しませんか? この近くにピザの美味しいワインバーがあるんですよ」

仲谷春樹に伴われて歩くあかねの姿をビルの影から確認すると、希代美は渋谷駅の改札口を抜けた。