猛達は本部へと引き返していた。
機密文書も回収し、男のパスポートも没収してきた。男達はきつく拘束し、部屋に転がしておいた。回収班に任せてきたので、男達も本部に連れて行かれるだろう。どうやって機密文書を盗んだのか。目的は。それらが調査される。
「武器も使わずに、どうやって倒したんだ? 秘孔って奴か?」
「そんな感じです」
「へえ、俺にも今度教えてくれよ」
隣に座る女の過去を知らぬ猛は、軽く言い放った。
「しかし、銃声にびびる事もねぇ。見直したよ。特に相手の背後に回ったのは、俺でさえ気付かなかったぜ」
女をちらっと横目で見て、
「そういえばまだ名前を聞いてなかったな」
「伊弉弥恭子です」
恭子は日本に帰ってきていた。海外での任務を終えて。少女の面影は無くなっていた。彼女はこの数年、どのような人生を送っていたのか。その風貌からは読み取ることが出来ない。横に座る猛も、彼女が海外で任務に当たっていたとは思いもしないだろう。ましてやその任務が戦地であるなど、今の恭子の出で立ちからは思い付くはずも無かった。
しかし猛は、恭子がこの部署に配属されるだけのスキルは持ち合わせていると判断したようだった。猛は大きく息を吐き、こう言った。
「仕方ねぇな。お前を俺の相棒として認めてやる」