練習な日々

失敗を恐れなかった結果

小学4~6年生合同練習。本日の練習会場は飛鳥中学校のグラウンドです。既定練習終了後、まだグラウンドが使用できるので、帰る子は帰らせて、まだしたい子は残ってゲームをすることになりました。

チーム分けをする前に、小学4年生が試合に向けてのミーティングに入ったので、5・6年生は待ち時間にロングキックの練習を始めました。

おかんはもちろん、ロングキックなどできないのですが、そもそも練習をあまりやったことがないので、息子を誘ってロングパスを繰り返しました。

そのうちTコーチが、

「次はパント!」

と言い、キーパーの子とバンバン始めたので、私もせっかくの機会なので、引き続き息子とパントキックの練習を始めました。

しかし、手からボールを離した後のタイミングが難しい。空振りしたり、うまく蹴れなくて飛ばなかったりで苦戦しました。しかし、やっているうちに、「息子の練習」ではなく、おかんがパントキックできるようになりたいと思い始めます。

こういうときは、頭ではなく数をこなすしかない! というのがおかんのスポーツの苦手領域の乗り越え方なので、

「いまから30回、パント往復やるよ~!」

と息子に言って、下手の横好きの熱い練習を始めました。

(失敗を恐れてできないまま過ごすよりも、失敗してでも繰り返し練習して習得したい!)という意思です。

しかし、息子のほうは、おかんのそういう性質を知っているので、2往復程してアサッテの方向にしかボールが飛ばないおかんに呆れつつも、「好きにしろ」といった感じでした。

5往復目で、おかんのボールがヒョロヒョロ~と脇に行ってしまったので、息子は(だる~)という態度で完全に舐めていました。この息子の態度で火がついたのです。6回目のキック。おかんが、

「なめんなよ!」

と渾身の力を込めて蹴ったキックは、力強く空を舞い、放物線を描いて、「ぽ~~~ん!」と大ホームラン! フェンスを越えてプールのなかに入ってしまったのです。

青ざめるおかんと息子。後ろを振り向いて学校の校舎を見ても、電気がついている部屋がない。先生方は全員不在の様子です。最後の頼み、音楽室を見てもやっぱり灯りが消えている。娘が所属する吹奏楽部は日曜日でも練習をやっていて、顧問の先生が出入りしていることが多いのですが、今日は練習がない日でした。

(はー、ダメだ……)

明日の月曜日、学校に電話して、ボールを取ってもらって、娘に持たせてもらうしかない。子どもの失敗ならまだしも、コーチの私がボールをコントロールすることができなくてプールにボールを入れてしまうなんて……。恥ずかしいの一言です。

おかんは落ち込んでしまい、息子とパントキックの練習を再開するどころか、その後の練習に参加する気もなくなってしまい、ベンチでため息をついてしまいました。

私が鬱々と落ち込んでいると、帰宅する予定のサトシが帰り支度を始めたので、

「ねー、コーチの失敗話してもいい?」

とリュックに荷物を入れているサトシをつかまえて、私のいま起こした失敗談を話しました。

「もうねー、自分が恥ずかしいよ……。中学の先生に怒られるかも」

と愚痴ってみたりする。心優しく、やや大人びたサトシは、

「あー、そうなんですね」

とさらっと笑って聞き流してくれる。

なんかもうね~、コーチと教え子の関係じゃないね。完全に横並び。小学4年生の子相手に。というか、今日は私が息子よりも下に落ちた。

そして、相変わらず鬱々としながらサッカーの居残りゲームを見ていたら、校舎の入り口から入ろうとする精悍な雰囲気の若い男性が!

カギを開けるときの慣れた感じからして『先生だ!』と思って話しかけたらビンゴでした!

事情を話して、プールからボールを取ってほしい旨をお願いしたら、

「あ、いいですよ~。ちょっと待ってください」

と言って、鍵をとってきて、プールフェンスのカギを開けて、一緒にボールをとってくれました。

「3年●組の山﨑リエの母でございます。いつも娘がお世話になっております」

と重ね重ねお礼を言いつつ、

「本当に今回は大変ご迷惑をおかけしました。お休みのところ、助けてくださりありがとうございました。運動会でもどうぞよろしくお願いいたします」

と校舎の入り口で、先生の姿が見えなくなるまで見送ったら、

「あー、お気になさらず。サッカー頑張ってください」

と笑って校舎へ入っていきました。

帰宅後、娘にボールを取ってくれた先生のことを確認したら、野球部の顧問の先生だと思うということでした。

それにしても今日は、子どもに、

「失敗を恐れるな。失敗を恐れて練習しないより、失敗してでも練習してできるようになろうとするほうが価値がある」

というメッセージを込めるつもりだったのですが、結局「世のなか、何が起こるかわからない」というメッセージを残してしまったようですね、いやはや。いや、違うか。

「パントキックの練習をするときは、コントロールできるようになるまではプールには近づかない」

というのが正しい教訓ですね。今後は気をつけます。

ちなみに、翌年、息子が中学校に入学したときに、ボールを取ってくれた野球部顧問の先生が息子の担任になり、おかんは二度も冷や汗をかく羽目になったのでした。