ある若者の体験談

ここで「愛は与えるものである」という真実を知ることにより、今までの苦しみや悲しみを乗り越え、本当の幸せをつかんだ若者の体験談を、紹介したいと思います。これは、突然の父の死に直面し、希望を失い、悩み苦しんだ末、あるきっかけで真実の人生観に目覚め、与える愛を実践し幸福な人生を歩み始めた、ブラジルの青年の体験談です。

突然の別れ

それは、青年が真実の人生観に目覚める3年ほど前のことでした。青年は父親と二人で暮らしていましたが、ある朝目覚めると、父親が家に戻っていないことに気づきました。不思議に思い父親の携帯にかけてもつながらず、会社に連絡しても、出勤していないと告げられました。知り合いに聞いてまわっても、誰も父親の居場所を知っている人はいませんでした。彼は警察に捜査願いを出し、祈るような気持ちで連絡を待ち続けました。

そして20日以上経った頃、警察から、父が事件に巻き込まれ、帰らぬ人になっていたことを告げられたのです。突然の出来事に彼は呆然としましたが、彼の頭によぎったのは、父親と最後に交わした言葉でした。

その日、父親はいつものように「出かけてくるよ」と彼に言ったとき、なぜか無性に父をハグしたくなったのに、彼はただ「うん」と答えただけで父親を見送ってしまったのです。彼にはそれが父親と交わした最後の言葉となったことが、悔やまれて仕方がありませんでした。

今はやさしかった父親の姿は見えず、他愛のない話で笑いあうこともできません。彼は寂しさに押し(つぶ)されそうになりましたが、父親がまだどこかにいるような気がしてなりませんでした。