Ⅰ- 6 コンピュータの発明と情報通信革命
1. 真空管の発明
まず、皆さんよくご存じのエジソンの白熱電球から話を始めます。エジソンは真空にしたガラス管のなかで金属線や炭化した線(最初は木綿を炭化)に電気を流して発熱させ、照明を行う白熱電球を発明しました。そして、メンロパーク研究所を設立し、400人の研究者を集めて、世界中から白熱電球に適した発熱素材を6000種類にわたって探索しました。
たまたまテーブルの上にあった日本の扇子の骨に使われている竹を焼いてみると、200時間の耐久性を持っていたことから、世界中の竹、1200種類を集めてテストしました。その結果、日本の京都八幡の竹から製作したフィラメントが最も長い2450時間の耐久性を持っていました。
エジソンは白熱電球の耐久性を上げることを目的に、フィラメントの周りを金属で覆ってみました。すると、ある程度フィラメントを加熱することで電気が金属板へ流れることを発見しました。これがエジソン効果と呼ばれているものです。
この事実を基にエジソン電球会社のアドバイザーであったイギリスの物理学者フレミングが1904年に図表1のような2極真空管を発明しました。
ヒータでカソードを加熱すると、カソードからプレートに向かって電子が飛び出します。電子の流れと逆の向きを電流の流れと定義されているので、電流はプレートからカソードに向かって流れます。逆方向には流れません。
この特性を使うと、交流を与えても一方向にしか流れない電流(直流)に変換することができます。フレミングは「交流直流変換装置」として特許申請しました。
さらに1907年、ド・フォレストは図表2のように、白熱カソードとプレートの間にグリッドを入れて、グリッドにかける電圧を変えることで電子の流れを制御できる3極真空管を発明しました。
カソードとグリッドの間にかける電圧の変化に応じてカソードからプレートへの電子の流れを増減させたり、遮断したりすることができます。出力をON/OFFする素子として使うこともでき、また入力電圧に対して出力電圧を増幅する素子としても使うことができます。
真空管の電気信号をON/OFFすることができる原理を活用して、2進法で0と1を表して計算を行うコンピュータが構想され、真空管を使ったコンピュータが開発されました。最初のコンピュータは1946年、17648本の真空管を使った計算機ENIACで、消費電力140kW、重量は30トンもありました。