【前回の記事を読む】心臓疾患を抱えて産まれた著者…「初めての手術」は1歳直前
1章 生まれてきたのは、心疾患の赤ちゃん
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それから1年がたち、私は2歳10ヶ月を迎えた。
「状態が良いので、2回目の手術を行います」
「よろしくお願いします」
今度は、1歳になる時よりも大きい手術。朝から夕方まで、9時間にも及んだ。
手術室から戻ってきた私はそのままICUに入院となり、しばらく家族と会うことはできない。体調のバロメーターであるサチュレーションの値は大きく下がり、75%になっていた。朝から夜までほとんど眠ったままの私を、ICUの窓の外から見守ることが母の日課になる。
大きな手術の直後は、誰もが常に生と死の隣り合わせ。ICUの中では、隣のベッドに寝ていた子が突然亡くなってしまうこともあった。初めての面会は、手術から1週間後に許可がおりた。今日から食事もできると言われたけれど、私は何も食べなかった。大きな手術をしたばかりだし、食欲がないのかもしれない、と母は思った。
けれど、次の日も、その次の日も、私は食べることを拒み続けた。
「お母さん、ひめかちゃんの夕食にお弁当を作ってきてください」
食べられない理由は、ストレスからきているのかもしれないと担当の先生は言った。体調はずっと不安定で、ベッドの上から動くこともできず、ママとは1日2時間しか会えない。2歳の私にとって、ICUでの長い入院はつらい生活だった。
「ICUに長く入院していると、大人でもノイローゼ気味になってしまう患者さんが多いんです」
だからせめて、いつも通りのご飯を食べさせてあげることができれば、という先生の優しい提案。けれど、夕食が母のお弁当に変わっても、私の食欲は戻らなかった。