この日は川湯温泉に宿泊した。硫黄山が近いせいか泉質は濃い白濁色で硫黄分がすごく強い。私の子供2人は温泉好きで大体は夕食前、夕食後、翌朝と最低3回は入るが、この温泉に限っては1回入ったら「もう入らない」と言った。あまりに成分が強く子供の肌には刺激が強すぎるようだ。大人でも皮膚の薄い箇所がヒリヒリするという人もいる。建物全体(もしくはこのエリア全体?)が硫黄臭い気がする。

阿寒湖畔にはアイヌの人々の集落「アイヌコタン」があり、伝統工芸品を制作、販売しているショップが集まっている。入り口のアーチにはアイヌの守り神の木彫りの大きなフクロウがおり、中に入るとトーテムポールが何本も立っている。本州の伝統的な集落の雰囲気とは異なり、気候が似ているせいか、何かで見た北欧や北米の昔の町に似ているように思える。

そこには小さナシアター「イコㇿ」(アイヌ語で「宝」の意)もあり定期的にアイヌ伝統の踊りを見せてくれる。高齢の髭を生やした男性の方がアイヌの狩人の恰好をして舞う姿を見てJR札幌駅の改札付近に飾ってある木彫りの人形にそっくりだと思った(主従が逆で多分このような方をモデルに人形が作られたのだろう)。

また女性が木製のお盆のようなものを使って舞う踊りがあり、最後にそのお盆をフリスビーのように私に投げてくれたが、それを受け取った時、何か少し嬉しい気分になった。

シアターではアイヌの伝統楽器「ムックリ」の演奏も行われて、息子はその音色に興味を持ったらしくショップのおばさんから音の出し方の指南を受けていた。アイヌ文化は文字を持たないが自然界からモチーフを得た独特の模様文化を持っており、このシアターで踊る方やショップの方もこの模様がついた衣服を(まと)っている人が多い。札幌駅の地下遊歩道の柱の展示スペースにもこの模様を縫い込んだキルトが複数展示されている。

ショップで私はシマフクロウとサケの木彫りのキーホルダーを購入し、かみさんはアイヌ模様の付いたバレッタとイヤリングを買い、祖母にはアイヌ模様の付いた木製のネックレスをお土産に買った。最初、祖母には魔除けになるクマの爪が付いたネックレスを買おうと提案したが、かみさんに「可愛くない」と却下された……。

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