長引く後遺症に苦しむ人も増えた新型コロナウイルス感染症

デルタ株やラムダ株など感染力の強い新型コロナウイルスの蔓延によって、爆発的な感染拡大が再び世界中で心配されています。2021年の8月には日本でも累計感染者数が100万人を越えました。幸い日本では新型コロナウイルス感染症による死者は低く抑えられていますが、新型コロナウイルス感染症から回復した患者が増えれば増えるほど、回復後も長引くさまざまな症状で苦しんでいる人が多いことが問題となっています。

日本では「新型コロナウイルス後遺症」と呼ばれることが多く、国際的には「LongCOVID」の呼称で知られるこの症状は、倦怠感・疲労感、咳、息苦しさ(呼吸困難)、胸の違和感、嗅覚障害・味覚障害、食欲不振、鼻炎、頭痛、下痢、不眠、脱毛など多岐にわたります。

いずれも発症原因がわかっていないため西洋医学では対応しにくく、鎮痛薬や睡眠薬の服用など治療方法は限定されているのが現状です。西洋医学では根本的な解決につながらないケースが多いのです。こうした状況の中、鍼灸や漢方などを治療法の中心に据えた東洋医学が注目を集めています。

東洋医学は、西洋医学のように発症原因を見つけてそれを取り除くという発想に立つのではなく、たとえば鍼灸治療では、ある症状とそれを緩和する特定のツボ(治療点)との関係を経験的に知ることで、幅広い症状の緩和に有効であることを実証してきたのです。とくに新型コロナウイルス感染症の後遺症として関心が高まっている諸症状は、ほとんどが2000年以上にわたって積み重ねられてきた東洋医学の歴史の中で、すでに的確な治療法が確立されているといっていいのです。

中国では、新型コロナウイルス感染症の後遺症だけでなく急性期、つまり患者が新型コロナウイルスと闘っている時期にも、鍼灸や漢方が肺炎をはじめとしたさまざまな症状を緩和するのに有効だという研究が発表され、ガイドラインまで示されています。

また漢方によって風邪に罹りにくい体質をつくれることがわかっており、日本でもそれが新型コロナウイルス感染症の予防にもなるのではないかという観点から研究も進められています。ここでは新型コロナウイルス後遺症のひとつひとつの症状を取り上げ、主に手のツボを押すことで、それらのつらい症状を自分で緩和させる方法を紹介していきます。

手のツボを押せばいつでも、どこでも、つらい症状を自分で緩和できる

つらい新型コロナウイルス後遺症も現代人を悩ます「なんとなく不調」も、手にあるツボを自分で押すことで緩和できるというのが本書の「ツボ」です。これを私は「手のツボ健康法」と名付けていますが、この「手のツボ健康法」は全身にある鍼灸のツボがすべて手の平や甲にあるツボに対応しているという考え方を基本にしています。

同じことが足の裏にもいえます。たとえば背中やお尻など、自分では簡単に刺激することのできないツボも、それに対応する手足のツボを見つければ、いつでもどこでも刺激することができ、つらい症状を緩和することができるのです。

ツボへの刺激は毎日、続けることで大きな効果が期待できます。自分の症状に合った手のツボを2つ3つ覚えておけば、時間の空いたときに刺激することで、無理なく続けることができるのです。「手のツボ健康法」は朝鮮半島で生まれた「高麗手指鍼」に影響を受けて発達しました。