古代人の観念
「よろしいです、姫様。大変納得できました。姫様最高ー」
ただ姫様と呼びたいだけの完全な卑弥呼ファンになってしまっている。
「最高なのは当然です。次にここにくる途中で明日美が襲われかけたあの謎の生物は、守護神のようなものと言いましたが、元々この洞窟に住んでいた古生物で、私も覚醒して初めて知ったのです。
どうもこの鍾乳洞は未知の地底世界へと繋がっているようで、この墓を造る前の調査において、更に深い場所で高等な生物の生息している痕跡が発見されたという報告をうけました。おそらくはそれらの古生物の一種でしょう。
そして私の夫にこの墓を守るように調教されていたようで、侵入者を威嚇するためにあのような不可思議な形体をしているのでしょう。この下には、明日美の見た映画のような、広大な地下世界があり、そして先ほどの地震でそこへと続く扉が開いたのかもしれませんね、何かを下に感じます。
後で話しますけど、闇の中で生きてきたものたちが、私達の目的の障害になる懸念があります。しかし今のところ地上には影響はないでしょう。ほかに私の飼っていたココという名の雌の黒猫がいて呼べばすぐにくるのですが――。まあそれもそのうちに現れるでしょう」
猫の話で気づいたのだがまたレオがいなくなっている。再び明日美の心配事を読み取った卑弥呼が、
「大丈夫です。ココを探しにいったのですよ」
それを聞いた明日香は安堵して言う。
「ココという名前は現代風だし、なぜそのココちゃんは魂のままで今日までいられたのですか?」
「ココのことも、目覚めて間もなく気づき驚いたのです。実は化け猫だったのですよ……。冗談です」
「……」
決してレベルが高いとはいえないジョークに二人は再び愛想笑いで返すしかなかった。それを読み取った卑弥呼もまた、滑ってしまったという無理な作り笑いでごまかすがすぐに真顔に戻り、何事もなかったかのように続けて話すのであった。だがどこか気まずい。