俳句・短歌 句集 2022.07.12 句集「八ヶ岳南麓」より三句 句集 八ヶ岳南麓 【第72回】 浅川 健一 八ヶ岳の麓で暮らす医師の、四季折々の俳句集 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 山法師湧水列をなして汲む 七月やレール鳴らして電車くる どこまでも蒲原平野夏の蝶
小説 『浜椿の咲く町[人気連載ピックアップ]』 【第2回】 行久 彬 父は一月のある寒い朝、酒を大量に飲んで漁具の鉛を腹に巻きつけ冷たい海に飛び込み自殺した… 智子は実直で潔癖なところがあり、今までも孝雄の参加した漁協主催の親睦旅行先での下卑た出来事を漁師仲間たちが面白そうに話すのを聞く度に嫌な思いをしていた。そんな話に慣れることはなく、むしろ話を聞く度に智子は夫に対する不信と不愉快さを心の中に蓄積させていったのだった。「あの男ならさもあらん」智子はそう思い、主婦から聞いた町の噂に疑いを持つことはなかった。噂が耳に届いた日、智子は待ち兼ねたように漁から…
小説 『薄紅色のいのちを抱いて』 【第6回】 野元 正 大島桜の葉を摘みながら、ふと、手を休めて青い空を見上げると目に光が飛び込んできて…意識を失い、視界は突如闇に包まれた 【前回の記事を読む】満開のしだれ桜の樹の下での初夜――17歳の私の相手は初めで最後の男だった桜の園の大紅しだれ桜はすっかり散った。大紅しだれ桜への園路が俳句の季語にもなっている桜蕊 (さくらしべ)で真っ赤に染まった。夕子はその沈んだ赤に心を重ね、華やぎの去った悲しみに似たおもいに囚われながら竹箒で蕊注1)を掃き寄せる。夕方から雨だというから、それまでにはできるだけ掃き集めておきたい。蘂は雨に濡れ…