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気にしいの性分ゆえ、気持ち悪くて仕様がない。
俺は悩ましげに右手を頬に当てたままだ。早く解答を見つけて頬を打ち、ポン!と気持ちのいい音を出したいのに、それができなくてストレスが溜まる一方だった。
俺だけがこの大問題に気づいていると思えば、なおさらだ。ある日同僚の石田が早くもインフルエンザに罹って会社を休み、代わりに同僚のお得意先回りをするよう会社から命ぜられた時、面倒くさいどころか、ある期待を持って俺は出掛けたのである。
地場中堅クラスの建設会社、友城建設の置き薬の補充を任されたからだ。もしかしたらここのところの、松平市における奇妙な建設状況に関し、なんらかの答えが得られるかもしれない。
クロスではなく、濃い赤茶の壁板が古さを醸し出す、雑然とした事務所だった。友城建設に赴き、一通り置き薬の補充を終え、事務所の来客用テーブルに置かれた置き薬の箱の蓋を、ぱちん、と閉じる。
目の前の褪せた黒いソファには、応対してくれた友城社長の奥さんが座っている。社長夫人というより、事務のおばちゃんという見た目である。補充した薬の明細を見ながら、浮かない顔をしていた。こんなに使ったかしら? という表情だ。だいたい皆そういう顔をするものである。
「今月もありがとうございました。次回は石田が来ると思いますが、今後ともよろしくお願いします」
頭を下げてお礼を述べる。しかしこれで帰ってしまっては意味がない。俺には訊かなければならないことがあるのだ。
「最近どうですか、お仕事の方は?」
「よかないねえ、ちっとも新しい工事が始まらなくてさあ」
奥さんのため息まじりの呟きに、俺の心は色めき立った。
「まあでも、解体工事の方がまあまああるから、なんとかなってるんだけどねえ」
更なる奥さんの呟きに、興奮を抑えられずにはいられない。やはり俺の感じていた通り、新しい建設はなく、解体工事ばかりというのが現状なのだ。
得意満面という感じで、「やっぱそうかあ」と頷いてしまった。
「なに、やっぱりって?」
怪訝な顔で、奥さんは訊ねてくる。