【前回の記事を読む】「モロッコ国王のマッサージ師」となった母の日記の中身

母の日記より【1987年7月モロッコの日々】

2日間宮殿で過ごした後、宮殿を出てホテルに移る(帰ってからの大使のお話によると、このホテルは要人しか泊まれないホテルだそうです)。最高の部屋、上流階級の気分を体験しました。

1泊した後モロッコへ戻ると、出発した時と同じく、空港で楽隊そしてモロッコに滞在している世界中の大使達が出迎えてくださり、タラップを降りる気分はもう最高。宮殿でもプリンスやプリンセスをはじめ、全ての方達がお出迎えして下さる。

日本にいたら絶対体験できない、素晴らしい数日間でした。

日記など書かない私ですが、日本を出る時に某婦人雑誌社から、帰ってきたら是非1年間の生活を描いたエッセイを連載したいので、日記を付けるよう頼まれていましたので、毎日欠かさず書いていました。1年のつもりがなかなか帰ってこないので諦めたようですが、雑誌は8年間も送って下さいました。日本の雑誌は綺麗なので、時々手元に届かない事もありましたが、プリンス、プリンセスは日本がお好きだったので何冊か差し上げました。

イギリスから帰国してから1日お休みをいただきましたが、1日中眠っていて次の日も夕食を食べる以外はほとんど眠りっぱなし。よほど疲れていたのだろう、気を使った上に時差もまだあったのでしょう。

ある日、王様から奥様のマッサージを頼まれましたが、まだ言葉が通じないので王様の通訳が必要なのです。お部屋でマッサージをしていると、テレビで日本の子供向け番組をやっていました。まさかここで見られるとは思いませんでした。

夏は海辺の宮殿で過ごすので、ある日王様から、

「まさえ、頭のマッサージをして欲しい、フランスから男性美容師が来てくれたのだが、その人が来ない時にマッサージをして欲しい」

とおっしゃって、フランス人から施術を習いました。

いざ呼ばれてプールサイドに行こうとすると、奥様の1人から、

「まさえ、挨拶をするその時はハビビンシディーと言うのよ」

と言われ、言おうとしましたが、あがってしまって忘れてしまいマッサージだけして帰ってきました。同僚に聞くと、

「まさえ、言わなくて良かったわよ。アイ・ラブ・ユー王様という意味よ」

と言われました。

あー言わなくて良かった、ひと安心。もし言っていたらどう対応されたのか、それもちょっと知りたかったなぁ。