明日美が佳津彦の表情を窺いながら手を挙げている。
「私の従姉妹の明日香も変な能力があるみたいなの。天見姫様はどうだったのですか。姫様」
「娘の天見姫も私同様の能力の保持者でした。しかしなんですね、どうも母の影響なのか、女系に強い超能力者が多いようですね。いずれ明日香の力を借りる時がくるかも知れません。そうならなければよいのですが……」
「姫様、今の姫様と幽霊とはどこが違うんですか」
思い立ったように明日美が真剣な面持ちで聞いてきた。
「わかってはいましたが、とうとうきましたか……それに明確に答えるのは難しいかもしれませんね、今とは概念が違い宗教も関係してきます。今の私はあなたのいう幽霊とは違い、どちらかというとそれは私たち古代人の観念だと考えます。
魂です。物理的に実体を持たない意思であり、生命のコアとなるものです。実際の魂は時とともに自分を見失い、消滅していくのが通常とはいえ、私たち超能力者と呼ばれている者の力は強力であり、かつて神と呼ばれていた時期があったのです。故に今はあなたを拠り所として、意思を伝えることができているのです。
次にあなたの言う幽霊とは仏教伝来後の概念で、遺恨や未練、そして怨念といった悪しき思いが可視化されたものを言うのではありませんか。釈迦は否定していますが宗派でさまざまですよね。人それぞれの感受性で決まるような難解で明確には言えないことで、あなたが私を前にしてどう感じたかということにつきますね。
よろしいですか。納得いただけましたでしょうか」