5 なめ子 20xx/xx/xx xx:xx

うそーっ、あんなに悩んでソープ嬢になったのに……ィ。あらかじめ決まっていた?

私は、そんな運命なのかよ!

6 ベートーベン 20xx/xx/xx xx:xx

たいがいの人の人生は予定調和的……家業が医者であれば医者になるだろうし、商売をしていれば商売を引き継ぐ。

予定調和的な人生とは人生があらかじめ決まっているということ、つまり運命。

ところが不思議なことに思わぬことが起こったとき、たとえば最愛の人に巡り合ったときに「運命の人だ」と感じたり、

災害に遭ったときなど予定調和的でないことが起こったときに「運命だ」と自分を納得させる。

これは人が運命というものを心の奥底で信じている証拠だよね。

それを示すいい例が、アメリカの宇宙飛行士アーウィンだよ。

アポロ15号の乗組員で、月でジェネシスロックを見つけた人。

その石はまるで台座に乗っているように、別の岩の上にアンバランスな格好で乗っていた。

誰もいないはずの月でそのような石を見た彼は神の存在を感じ、地球に帰還後伝道師になった。

彼は海軍士官学校を出て神学とか学んでいたわけでなく、日常の習慣で教会に通うていどのクリスチャンだった。

その彼が宇宙飛行士から伝道師になったということはまさに「運命的」だと思う。

7 シナトラ 20xx/xx/xx xx:xx

そうかなぁ?

人には優しさもあれば残酷さもある。優しさが増せば残酷さは減る。勇敢と臆病も同居している。

どちらかが強まればもう一方は弱まる。正直と嘘つき、明るさと暗さ、素直とひねくれ、欲望と節制。

人の心の中には両極端の感情がつねにある。

どちらを選ぶかはそのときの心の状態だろう。

娼婦でも『タイタニック』などの純愛物語を見れば涙する。それは肉欲ではない純愛を求める心が彼女の中にあるからだろう。

アーウィンの話は立花隆の『宇宙からの帰還』で僕も読んだ。アーウィンの心の中には、理工系を学んでいるからロジカルな面もあっただろうし、人間だからスピリチュアルな面もあっただろう。

彼がジェネシスロックを見つけたとき、神の臨在を感じ、スピリチュアルな面が強くなって伝道師になろうと決断したんだろう。

もしそのときロジカルな好奇心が強かったら、その石がどうしてそのように置かれていたか、力学的あるいは地形学的に考えたのではないだろうか?