【前回の記事を読む】人間社会の崩壊へとつながる、「富の偏倚」の実態とは…
第2章 世界の貧困
金融機関の間では暗黙の了解事項として「儲かる時にはドーンと大きく儲け、損をするなら巨額の損失をする大博打を打て」ともいわれているという。
これは、儲けは自分のものにしてしまうけれど、前述のしくみ他によって損失は国民に穴埋めさせている(注)からで、これによっても所得格差は拡大しているのである。
(注)増田悦佐著『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス、2012、朝日新聞「カオスの深淵」取材班出版『民主主義って本当に最良のルールなのか、世界をまわって考えた』東洋経済新報社、2014参照
2008年の世界金融危機の際にも、アメリカは国民の納めた税金を使って投機行為で空けられた穴の後始末をしている。同時に実体経済の生産企業を助けるより先に金融関係企業を支援したので、いち早く立ち直った金融部門の幹部社員たちは以前にも増して高額な報酬を得ているのである。
このことは2014年にニューヨーク共同が、2008年のリーマン・ショックの後で「高すぎる」と批判の的になっていた金融大手関係者の報酬は、翌年相次いで引き上げられていることを報じたので明らかにされた。
ちなみに、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーの経営者ジェームス・ダイモンの報酬総額が前年度比で7.4%増の2千万ドル(約22億8千万円)と伝えられており、ロイター通信も元ゴールドマン・サックスのブランクファインCEOの報酬は前年度比10%増の2千3百万ドル(約26億2千万円)であると報道しているのである。
また、景気浮揚策として行われている金融緩和は、投機などを活性化させるだけで実質的な経済を成長させるものではないのに、日銀は2013年4月に引き続き2014年10月にも金融緩和の追加を決め、国債を購入し市場に供給する金を今までの年間60~70兆円を80兆円に増やそうとし、2015年3月の委員会は賛成多数で決定したが、経済の実力が底上げされないまま市場に大量の金が出回り続けるので、行き場を失ったマネーは不動産や株式等の投機に向かうことになるから、再びリーマン・ショックのような金融危機状態になる可能性は大である。
更に、2016年7月日銀は追加緩和を決めた。これは輸出型の大企業を潤すアベノミクスの株高・円安政策に沿うもので、輸入物価を上昇させ中小企業や一般の家庭に苦痛を与えたけれど、2018年1月にも金融政策決定会は金融緩和策の継続を決めている。
そして、各国の政府も株価が上昇すると「景気が良くなった」かのように錯覚させようとしている。いかに「わが政策が良いか」と胸を張っているにもかかわらず、下降した時には囗を閉ざしている。
しかし、株価は実質的な富には何の関係もないのである。