【前回の記事を読む】「恵子ちゃん、それは男の子の役」性同一性障害の幼稚園児は…
小さな悩み
小学生に上がると僕を悩ませることが少しずつ増えてきた。小学校生活は小さな社会生活であった。つまりそれは性別を意識して生きなくてはいけないことを意味していた。
入学前に祖父は僕のためにランドセルを買ってくれた。ランドセル自体は嬉しかった。でも僕は赤い色が女みたいで嫌だった。僕は複雑な気持ちでそのランドセルを背負った。
最初の苦痛は入学式のスカートと男女で異なるランドセルの色だ。これは僕の自信を削られた。僕はいまだに女であり、それを隠すことはできないようだ。その象徴がこのランドセルの色とスカートだった。
恥ずかしい。僕は俯いて教室に入った。人見知りの強い僕が小さな集団に入ることはとても怖かった。初めて僕に声をかけたのは前の席の女の子だった。
「こんにちは」
育ちの良さそうな女の子だった。僕は頭を下げるのが精一杯だった。それを見かねた母が代わりに答えてくれた。
「よろしくね」
僕が話したいのは、既に集団が形成されている男の子たちの方だった。僕の席の周りには女の子しかいなかった。とても居心地が悪くこの教室がどんよりと淀んでいるように思えた。この時から僕は一人だった。二人組でペアを作ることやグループを作ることが何よりも苦痛だった。僕は必ずはじき出される。初めての運動会のお弁当も僕は一人で食べていた記憶がある。
それでも家に帰れば、嫌なことはすぐに忘れられた。家族がいたからだ。僕は、いつも家族に囲まれて楽しかった。こんな僕にいつの間にか友達ができたのは夏くらいだった。席替えをきっかけにできたグループだった。そこは男女関係なく、とても居心地が良かった。リーダーの男の子はとてもかっこ良くてみんなに慕われていた。僕も彼が大好きで彼の服や小物を真似ることもあった。