〈注1〉 「人事委員会」と「予算委員会」

(1) 当時の都立学校の状況 

かつての都立学校には、校内組織として「人事委員会」や「予算委員会」なるものが存在していた。そして、職員会議で選出された人事委員が、校務分掌案や主任案を作成し、職員会議において多数決で決定し、校長がこれを“追認”するというものだった。したがって、校務分掌の原案作成の過程で、校長の意向が反映されることはほとんどなかった。また、校長自らの判断で校務分掌の組織改編をし、主任等の人選を行うことは極めて困難であり、校長は人事委員会の作成した人事案を追認せざるを得ない状況にあった。

一方、予算委員会は、人事委員会で選出された予算委員と教頭及び事務長等の事務職員で構成された。予算委員会の役割は、学校予算の使途の検討を主とするが、教科関連予算のみを対象とする学校から、管理経費をも含めたすべてを対象とする学校まで、様々であった。そして、ほとんどの都立高校の校長は、予算編成に関与することなく、提出された予算案を右から左へと承認していくのみであった。

(2) 校務運営上の課題 

このような状況下では、人事委員会が実質的に校長の人事権を侵害しており、校長が学校経営方針に基づき、校務分掌に関する組織編制、担当の選任及び運営を行うことは極めて困難となっていた。また校務分掌の決定に際し、教員個人の意向が優先され、学校全体の視野から適材・適所の配置や計画的な人材育成が図れない状況にあった。

また、予算委員会が学校の予算編成を行うことが慣例化し、校長がリーダーシップを発揮し、事務室が主体的に関わることが難しい状況になっていた。校長の予算編成指針が示されない中で、教員から選出された予算委員会が中心となって予算編成を行うため、各教科の要望や前例が重視され、真に必要とする分野への重点配分や新たな分野への取り組みが困難になっていた。

(3) 都教委の方針 

こうした現状を打開するため、都教委は、通達を発出し、学校運営のあるべき姿、標準的な校内組織、校務分掌を提示するとともに、人事委員会を禁止する旨を示した。そして、各都立学校の校長は、本来の人事権に基づき、校長の責任と権限で、校内人事を決定することを指示した。

また人事委員会と同様に、予算委員会も禁止する旨を通達で示すとともに、新たな学校予算編成方式を提示し、校長は学校経営方針とそれに基づく予算編成指針を明確にし、その指針に基づいて予算編成・管理・執行を行うこととした。(出典:『都立学校等あり方検討委員会報告書』(東京都教育委員会)より一部参照)