【前回の記事を読む】緊急事態発生!「目視できない」未知の物体との衝突の危機
苦難の刻
巨大浮遊惑星との遭遇
織田が燃料の有無を確認。「乙姫は搭載燃料の20%がこの噴射で必要になる」と伝える。
ウラシマの船首が1時の方向に向いたが、どういう訳かウラシマに緩やかな回転が生まれてしまった。ゆっくりローリングするウラシマ、このままでは進行方向を見失ってしまう。
ウラシマは回転を止めるために小型制御エンジンを細かく噴射するが、何分にも4キロメートルもある船体であるのでなかなか正常に戻らない。
3日間の姿勢制御の末、やっと止めることができた。
3時の方向へ8基の全エンジンを噴射して浮遊惑星からの危険を脱出することに成功した。しかし、この作業と軌道修正により目標までの軌道が大回りとなり、更に燃料の消費が進むことになった。
しかし、この危険状況を脱出しなくてはこの先がないのであるからやむを得ないことであった。不足する燃料の確保は後で考えるしかない。
2週間後、浮遊惑星はウラシマから8千万キロメートル、およそ0・4au(太陽と水星の距離)の離れたところを無事に通過した。
通過するときウラシマはこの浮遊惑星をつぶさに観測、惑星の大きさは土星とほぼ同じ直径12万キロメートル、球面全体が分厚い氷とガスに覆われている。そしてもしこの惑星を水に浮かべるなら浮いてしまうほどの軽さであることがわかった。
浮遊し始めてからすでに15億年以上浮遊していることも確認できた。
更にもう一つの成果として、月のような衛星の雲の中からハヤブサロボが有機物を採取したのである。ウラシマにはこの有機物を検査する装置がないので、地球外生命体を捕獲したときに入れる赤のボックスに収納した。
地球も数十億年後には太陽に飲み込まれるか、この浮遊惑星のように宇宙をさまようことになる。
まさに宇宙をさまよう地雷のような存在である。
この危機から脱出したのを確認した主人たちは、再び永い眠りについた。