「……」
「何携帯いじりながら言ってんだよ! 適当なこと言ってんじゃねー!!」
「じゃあ、この男、知ってるね」
「だから、覚えてねぇよ!」
省吾は大木ではない人気俳優の写真を見せた。
「知らないの? 人気あるのに!」
「ふざけてんじゃねーよ!」
「じゃあ、この中にいる?」
省吾は高橋の父親の写真も混ぜて見せた。
「どうも、この男が一番怪しいとにらんでいるんだけど」
「違う! それは親父だよ! 親父がなんで疑われてるんだよ!」
「違うの?」
高橋は大木の写真を手に取って語り始めた。
「こいつだ! こいつが脅してきたんだ! 親父まで巻き込んでるのか! きったねぇ野郎だな! こいつはみんなを不幸にするやつだ! 許せねー!!」
「全部話してくれるね」
「わかった! わかったから親父だけは何も悪くないってことだけは信じてくれよ!」
そして高橋はわかる範囲で説明しだした。
「俺の親父はこいつの大学の同級生でさ、俺が大学受験に行き詰まってた時、こいつが金を用意して、大学に渡してくれるって親父に言ったんだ。だけど、俺はそれ知らなくて、どうせ大学になんか受かるわけないと思って、受けに行かなかったんだ。そうしたら、大学にもう金渡した、競馬で大損して金なくなったから二百万返せって俺に請求してきて、そんな金ねえからって断ったら、その分働いてもらうからって、詐欺の受け子やらされたんだ。一回くらいならって、仕方なく引き受けたんだけど、捕まりそうになって、もうやらないつもりだったら……」
「脅されたの?」
「そうだよ。音羽伸晃の家にかけ子が電話して、俺、嫌だったんだけど無理やりやらされたんだ」
「いくら受け取ったの?」
「五百万」
「へえーー、他は?」
「名前は覚えてないけど、田国超富の豪邸に老夫婦が住んでいて、そこから三百万、あとは医者とか政治家とか二百万だったり五百万だったり、五、六回くらいやって……」
「そのお金はどうしたの?」
「上に渡して、一割はもらった。使いきれねーから、友達におごったり服買ったり……」
「他は?」
「ゲーセンやカラオケ。他は持ってるけどさ」
「全部でいくらもらっていくら残ってるの?」
「大体、四百万くらいもらって、使ったのは五~六十万くらいだよ」
《本当はもっと使ってる。百万以上は使ってるけどな》
その後も話は続いたが、大きな嘘はついていないようだった。