【前回の記事を読む】ついにウラシマ発進!太陽系から地球に帰る術のない領域へ…
苦難の刻
巨大浮遊惑星との遭遇
ウラシマがオールトの雲を通過して120年が過ぎた頃。真っ暗な闇の中に、自ら光ることなく猛スピードで飛んでいる浮遊惑星が近づいてきた。ウラシマはまだ何も気付いてはいない。暗闇の大海で浮遊している氷山に遭遇するようなものである。
問題は双方がものすごいスピードで飛んでいるので、ウラシマが衝突したときの衝撃エネルギーは車のフロントガラスに当たる虫のようなもので、ウラシマがその引力圏に入るだけでバラバラに砕け散ってしまう恐れもある。この浮遊惑星の大きさは土星ほどあり、夜道を歩いていたら突然無灯火のダンプカーにぶつかるようなものである。
ウラシマの光学電波望遠鏡が本来見えるはずの、遥か遠い恒星の光が突然消えたのを観測した。乙姫の恒星探査システムが何かの物体が観測恒星とウラシマの間に入り込んだことを確認、そして電波望遠鏡がかすかにゆがむ時空を確認した。何かが近づいてくるが全く見えない。深海の中からひそかに近づく人食いザメのような恐怖心が湧いてくる。
異常を認識してからおよそ24時間が経過した。ウラシマとの間に何かが入り込んだのは紛れもない。ウラシマの飛行スピードは光速の半分ほどに達しているのでウラシマから発するレーダーでは、ウラシマのスピードが速すぎて確認できないのだ。
未知の物体との遭遇は一瞬ではあるが、たとえ衝突を免れても大きく軌道を変えられることにもなりかねないし、万一重力圏内に入ってしまうようなことがあれば、跡形も無くウラシマは分解消滅することになる。宇宙的距離からすれば、この浮遊惑星は地球のすぐそばを漂っていることになる。いつ太陽の引力に引き付けられて太陽系に落ち込んでくるかもしれない危険惑星である。
ウラシマは、この浮遊惑星の存在を直ちに地球に向けて発信した。しかし、この報告が地球から返ってくるのに150年近い歳月がかかる。地球が受信できたかどうかの確証を取りようがないところまでウラシマは来ている。このような浮遊惑星は、宇宙には意外と多いものである。
恒星が大爆発をして消滅すると、その恒星の周りを回っていた惑星は、恒星の重力から解放され浮惑衛星となって広大な宇宙に放出される。この浮遊惑星も何十億年か前に宇宙のかなたで恒星の周りを回っていたに違いないが、その恒星の消滅により浮遊しだしたのであろう。遂にウラシマの低温重力波測定望遠鏡と電波望遠鏡が浮遊惑星の姿をとらえた。
この浮遊惑星の周りには、宇宙に浮遊し始めてから今でも当初から抱えていた3つの衛星が回っているではないか。このままでは、その一番外側の衛星、月の半分ほどの大きさであるが、その衛星の引力に引き付けられてしまい、ウラシマの軌道が大きく変えられてしまうか、船体がちぎれてしまうことになりかねない事態であることが判明した。