今更傘を差し出したところで無意味なのはわかっていたが、とにかく雨から遠ざけなくてはと思った。紗里は僕が来たことにも気づかず桜を見つめている。髪の毛から雫が止めどなく垂れて紗里の首筋へと流れていく。それを見て僕は欲情した。こんな事態なのにこんなことを思ってしまう僕はどうかしているのだろうか? 僕から湧き出てきた動物的本能を懸命に抑えるように僕は紗里の両肩に手を置いた。紗里の肩は小刻みに震えていて熱…
[連載]ヒズミのなかの住人たち
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小説『ヒズミのなかの住人たち』【最終回】葉 リヒロ
傘も差さずに桜を見上げている彼女。髪から首筋へ流れる雫に僕は…
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小説『ヒズミのなかの住人たち』【第11回】葉 リヒロ
付き合いたいと思っていた女性から告白されたのに、なんの反応もできず黙ってしまった
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小説『ヒズミのなかの住人たち』【第10回】葉 リヒロ
肌寒い日が続く中、出会った彼女。僕の心を揺さぶったあの日の思い出
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小説『ヒズミのなかの住人たち』【第9回】葉 リヒロ
【小説】誰にだって知られたくないことはある。日本へ帰って来た恋人の変化にレンは…。
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小説『ヒズミのなかの住人たち』【第8回】葉 リヒロ
もし僕が他の娘と仲良くしても、彼女は何とも思わないのだろう…。
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小説『ヒズミのなかの住人たち』【第7回】葉 リヒロ
【小説】自分の大切な物をぺしゃんこにした妹。我慢の限界で…
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小説『ヒズミのなかの住人たち』【第6回】葉 リヒロ
【小説】データが処理しきれず熱くなる体「これは悲しいのか、嬉しいのか、怒りなのか」
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小説『ヒズミのなかの住人たち』【第5回】葉 リヒロ
「抑えきれなかった」…「ルール」に背いても、彼女を知りたい
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小説『ヒズミのなかの住人たち』【第4回】葉 リヒロ
始業6分前。不意な吐き気とともによぎったのは「あの時のこと」
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小説『ヒズミのなかの住人たち』【第3回】葉 リヒロ
「生温かいゼリー状の液体に心が包まれるような夜」に出会ったあの人との関係
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小説『ヒズミのなかの住人たち』【第2回】葉 リヒロ
「私は母のような女ではない。ほしいものは絶対に譲りたくない」
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小説『ヒズミのなかの住人たち』【新連載】葉 リヒロ
【小説】パパがいた時期、ママはよく歌っていたしとても陽気だった