【前回記事を読む】親不孝のかぎりを尽くし母を泣かせた私。自分の死を予感するようになり母の骨を手に入れようと姉に頼むと…アル中の施設に入(はい)った私を待っていたのは、厳(きび)しい収容生活だった。楽しみと言えば、月に一度、仲間たちと一キロほど離れたビルの中のスパ温泉に行(い)かせてもらえることだった。そこには作り物の岩風呂があって、日(ひ)がな一日、その湯に浸(つ)かって、よく思い出に耽(ふけ)…
[連載]荒野の果て
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エッセイ『荒野の果て』【第4回】田中 敏之
彼は私の差し出した瓶の酒をラッパ飲みすると、虚ろな顔で湯の中に滑り込み、沈んだまま浮かんでこなかった…
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エッセイ『荒野の果て』【第3回】田中 敏之
親不孝のかぎりを尽くし母を泣かせた私。自分の死を予感するようになり母の骨を手に入れようと姉に頼むと…
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エッセイ『荒野の果て』【第2回】田中 敏之
母を拒絶し厄介払いにして、酒を飲む日々。母のことごとを、ほとんど無感覚に受け流していった。そして母は肺炎を患い...
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エッセイ『荒野の果て』【新連載】田中 敏之
小春日和の下、山際の小道を駆け上がりはじけるような声をあげて笑う母――しかし、それが私の覚えている母の最後の笑顔となった