【前回の記事を読む】【小説】「生きているということは、いいもんでござんすよ」三勢戸屋は坊の岬沖で抜け荷の荷を瀬取りし、坊の入り江の南端の断崖に沿って蕪木川の河口に向かい、さらに、川を遡って陸揚げしていた。吹の村人は、坊の岬の先からどこからともなく帆をはった小舟が現れて、入り江の中央に連なる岩礁の陰を、蕪木川の河口に向かって上っていくのを幾度となく見ていた。舟が見えるのは潮が止まったときか、上げ潮…
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