ハアアア……広い部屋に淫靡な声が響いていた。
「はあああン……。こんな快感初めてだわァ……」
寝台の上で、中年の女性が身をくねらせている。その手を握っているのは、椅子に背筋を伸ばして座っている、恭子だった。女に、冷たい視線を送っている。握られた手からは、掌の中に何かの光源があるかの様に光が漏れている。その光がゆっくりと消えた。
「止めないで!」
身をくねらせていた女が突然叫び声を上げ、腕にしがみつく。恭子も女も、拘束はされていなかった。恭子は女をじっと見つめていた。掌から、バチッと音がして、電気がショートしたような眩い光が迸った。女はベッドの上に昏倒した。意識を失ったようだ。時折、ピクッと身体を震わせている。
「すばらしい。コントロール出来るようになったようですね」
部屋の隅から、恵比寿顔の声が響く。恭子はその方向を見た。此処は、あの白い部屋。台の上には女が横たわっている。あの出来事から、数日が経過していた。
「どうします?殺しますか?」
あの事件以来、恭子は変貌した。感情をコントロール出来るようになった、というよりは、感情を消失させたようだった。
「ええ、やって下さい」
恭子は女の方に向き直った。途端に女は悲鳴を上げ、瞳を反転させて寝台の上で仰け反った。
「逝くうううう!」
女囚は全身をブリッジ状態で仰け反らせて硬直し、歓喜の悲鳴を上げた。声が掠れながら消えていくと、女囚は台の上にドサッと倒れ込み、白目を剝いて息絶えた。股間部に水のシミが広がっていく。
「見事です」
女囚の手は、恭子の掌から力なく滑り落ちた。恭子は何事も無かったかのように、寝台に背を向けた。立ち上がり出口に向かって歩き出す。恵比寿顔は横に並んだ。
「ラットの実験で判ったのですが、貴方は寿命を奪っている訳ではない。生命力を奪っているのです。生命力は復元出来る事が判りました。敵を気絶させる事に関しては、二~三日意識がなくなる事になりますが、相手を傷付ける訳ではないので気にする事はありません」
「そうですか」
恭子は、恵比寿顔の言葉を気にも掛けない様子で、部屋を出て行った。