【前回の記事を読む】「パスポートを返して!」空港で軟禁状態にされた理由とは…

第二章 機中にて

いったい何の理由で?

その後の再度口論の結果、私のパスポートや荷物には何ら問題ないこと、航空会社のホテルの利用券にある通りにホテルに宿泊できること(初めは警備室から一歩も外出させないと言われていました)、しかしホテルには警備員が同行・同宿することが条件として出されました。やむを得ず合意し、夜遅くにやっとホテルにチェック・インしました。

非常に空腹だったのでレストランに行くと警備員に伝えたところ、自分も行く、と言ってついてくるのです。食後の支払いの際、彼は「俺のも払え」と言ってきたので「冗談じゃない、なぜあなたの分まで払わねばならないのか、絶対に断る」と返答したところ、彼は何かブツブツ言いながらホテルの担当者と話をして、どうやら「ツケ」にしたようでした。

部屋に戻ってから私は隙あらば逃げてやろうと思っていたのですが、テキもさるもの、私の荷物(スーツ・ケース四個)を部屋の一番奥に押し込み、自分は出入り口に近いほうのベッドを占領し、枕の下に私のパスポート、拳銃を重ねて置き、その上に靴も脱がずに横になりました。それを見て、さすがにじたばたしてもしようがないと思い、私も寝ることにしました。

翌朝、朝食後に警備員は私と荷物を車に載せ、予約している航空会社の事務所まで行き、そこの責任者を呼んで何かの書類にサインさせ、やっと私を解放しました。

そこの責任者は「どうしたのですか、何があったのですか」と質問してきたので、昨日の出来事を説明し、私自身何が原因であのような状態にされたのかわからないこと、できれば調べてもらえないかと依頼しましたが、その後の連絡はありませんでした。日本に帰国後すぐに、勤務先にイースタン航空の旅客担当者を呼び出し、なぜあのような事態を起こしたのか説明を求めましたが、回答のないまま数日後にイースタン航空が経営破綻して消滅してしまったので、いまだに理由は不明のままです。

教訓

ここでの教訓としては、強いて挙げればCAからパスポートを見せてほしいと言われたとき、誰が何のために見たがっているのかを強く要求し、要点を確認し、渡しても問題ないと確認できた場合のみ要請に応じ、それが満たされなかった場合には断固拒否する、ということでしょう。

また、このトラブルが起きたのがあいにく土曜日の午後であったため、日本領事館や会社の事務所に連絡が十分に取れず、結局最初から最後まで自分一人で対処せざるを得ませんでした。

口論の途中で、空港警備側は私をその事務所から外へ出さないと言っていたのを何とか説得し、ホテルには宿泊できましたが、その際にはかなりハードな交渉が必要で、改めて、自分の言いたいことくらいははっきり言えるくらいの語学力は必要であることと、妥協点をどの辺にするかなどの判断力も必要だと思いました。このような経験と教訓は、ほとんどの人には必要ではないと思いますが。