【前回の記事を読む】山と海に囲まれたカラフルな街ノルウェーで見た、圧巻な風景

ノルウェー賛歌

気分良く目が覚めてオスロの一日が始まる。ノルウェーの人口四五〇万の大半はオスロ周辺の南部に集中している。今日の観光の最初はバイキング船博物館で、この国の過去の荒々しい民族性を見る。船はデザインもスマートでこれが副葬品とは驚かせる。

次に国立美術館に走る。一階にエドヴァルド・ムンク(一八六三~一九四四)の部屋がある。暗い不安を白昼夢のようにユラユラと描いた。彼がドストエフキーの影響を受けたのは知っていたが、現地女性ガイドの解説はテキパキしていて「ニーチェへの抵抗が『叫び』を生んだ」という説は初めて聞いた。「思春期」の恐れの表情も印象に残る。表情主義の大家だと思う。ヴィーゲランが制作したフログネル公園の二〇〇体の人体が絡み合っている彫刻群は人の一生を感じとれた傑作だった。

[写真1]フログネル公園の彫刻

ところで、北欧は全体に女性の社会進出が進んでいるが、ここノルウェーでは、企業に対して「役員の四割を異性にすること」という法律が制定されていて、日本の遅れを実感させる。

さらば北欧、個性的な三文明

昼食は中央駅で、豪華客船以後久しぶりのアルコール付きで、ビールを飲んだ。午後は自由行動で、ガイドに教えられていたので、美術館のホールでの室内楽コンサートへ行った。(200NOK)。ツアーの人たち七、八人も同行した。モーツァルトのピアノ四重奏曲を前後に据えて、本命はグリーグの弦楽四重奏曲ト短調だった。ノルウェー民謡風の郷土色強い演奏で大変満足した。私が音楽好きなのが知れ渡っており、ツアーの人たちがプログラムを訳してくれと言ってきたので応じた。

それから歩行者天国へ出て、庶民的な国王だから触れますよとガイドが教えてくれた王宮へ行って外壁を皆でサスった。八事の美人オバさんが「サスるなんてセクハラみたいですね」と私に言うので「国王が興奮して……(以下略)」と答えた。旅先のオバさんは明るくて結構だ。

ホテルとなりの専門店で記念のセーターを買ってから、この国は英語がよく通じるので近くの中華料理店の場所を聞いて、通行の現地のマダムに親切にも案内されてありがたかった。私の食べた湯麺のスープは大変美味かった(300NOK)。ノルウェーは西欧に近く洗練された観光政策が感じられた。

北欧旅行も終わりである。三つの国はそれぞれの文明に個性があった。特にスウェーデンの文明は所得再配分により行き過ぎの感もある。日本は猿まねしないで、まず天災を防ぐ方法を考えよう。持続可能の社会建設はその後でよい。

ただスウェーデンで、冷戦が終わったので、失敗例とされている核シェルター(現在観光バスの駐車場になったりしている)は、日本にとって今後、東アジア情勢のもと、専守防衛のために建設が必要ではないか。

北欧三国で感心したのは男女同権が完全に実現しており、世界でも先端を切っていることである。日本でも、いずれその後を追っていくのだろうが、日本女性の美徳とされる「従順さ」が少なめになることに、男性が簡単に納得するかどうかである。もちろん日本の女性は、更に、厳しい努力が望まれる。それでも法律で同権を実現しても、最後まで同権にならないのは人間の動物としてのオスとメスの実態であろう。(二〇〇六年〈平成十八年〉十月記)