【前回の記事を読む】フライト時刻まで30分!男達の焦りの原因は上司からの依頼?
第二章 機中にて
周囲、特に後ろ座席にご注意
これは私が初めて海外の工事作業所へ赴任のため、UAE(アラブ首長国連邦)へ向かっていた空路移動中に起きたことです。
私は南回りのオランダ方面行きのフライトで、マニラ→バンコック→ドバイの予定で、一九七九年八月八日にまだオープンして間がない成田空港から出発しました。私のすぐ後ろの席は、オランダの少年柔道大会に参加する十人ほどの子どもたちが占めており、かなり賑やかでした。
マニラまでは約五時間の飛行で、天候は晴天でしたが、八月ということもあり、南下するに従い気流が悪化し、かなり揺れるようになってきました。
出発して二時間ほど経った頃昼食が配られ、後部座席の子どもたちも大賑わいで食べていました。私の席の後ろの小学校四年生くらいの男の子も同じように食べていました。食事も終わってほっとして、マニラ空港にあと一時間かなと考えていたとき、突然「ゲー」とも「ガー」ともつかない音とともに私の頭の上から何か非常に臭いものが降りかかってきました。始めは何がなんだかわかりませんでしたが、よく見るとなんと後ろに座っていたその子が飛行機に酔って、食べたものをそっくり勢いよく吐き戻したものでした。
まさに青天の霹靂で、すぐにCA(Cabin Attendant=客室乗務員=当時はスチュワーデスと呼んでいました)を呼んで事情を説明したところ、その女性CAは大変驚いて自分が失敗したかのごとく慌てふためき、おおわらわで汚物を処理したり、私の頭髪など汚れた箇所を洗うのを手伝ってくれました。またその柔道少年団の男性添乗員も大変恐縮し、何度も謝ったり掃除を手伝ったりしてくれました。
私は学生時代、柔道部に籍を置き、日々柔道に汗した経験を持っていたため、落ち込んでいる子どもたちを見て何も言えず、ただ試合に頑張れ、とのみ伝えました。
マニラ空港へ着陸後、待合室のトイレでそこにいた現地人掃除夫たちに手伝わせて、もう一度頭を洗ったり、衣類の汚れを洗い流したりしましたが、今でもそのときの情景や、当時の人気女優に似た美人CAをよく覚えています。
教訓
飛行機で移動中は、自分の座席の周辺にはどのような人が座っているのか、またその人たちは飛行中の気分はよさそうかなど、気に留めておいたほうがいいでしょう。特にそれまで騒いでいた子どもが急におとなしくなったときは自分の子どもに限らず要注意です。また酒類がまったく飲めない私には関係のないことですが、飛行機の中は地上より、かなり酒に酔いやすいということを知らずに飲みすぎて、ヘドをまきちらす不届き者も、日本人に限らずゼロではありませんゆえ。