「……ほう、お前ら知り合いか」

中央の男が楽しげに口を開いた。

「ウマル。女の肩を撃て」

男の命令と共に銃声が響き、少女は肩に灼熱を覚えた。

少女の指の筋肉が収縮し、小銃の引き金が引かれる。しかし銃弾は男達の遙か頭の上を(かす)め、天井へと流れた。

肩への衝撃と銃の反動で少女の身体(からだ)は後方へと飛び、背から床を叩いた。小銃が手から離れ、床を転がっていく。すかさずボスの脇に座っていた男達が少女を押さえにかかる。一人が銃を蹴り、もう一人が少女に馬乗りになって上着を引き裂いた。

「いやああああ!」

悲鳴が空間に響き渡った。その悲鳴を嘲笑(あざわら)う男達の声が混じる。

「お前一人で、俺達が()れるとでも思っていたのかぁ?」

「俺達()まってっからよぉ。たっぷり可愛(かわい)がってから殺してやる」

少女は自分の無力さを悔やんだ。家族の(かたき)を討つことも出来ず、ただ凌辱(りょうじょく)され、(あり)のように殺される。

もう、こんな国で生きていくのは嫌。殺されてもいい。ただ、一矢報いたい。

少女は激しく抵抗した。

それを嘲笑うかのように男達は見下ろしている。

顔を拳で殴られ、意識が遠のく。

もう駄目だ……。

そう思った時、破裂音が鼓膜を刺激し、上に乗る男が覆い被さってきた。その瞬間少女は目を閉じた。しかし、男はピクリとも動かない。そして辺りが静かになっている。

少女がゆっくりと目を開くと、周りの男達は自分とは逆の方向に視線を集中させている。

男達の視線の先には弟がいた。

弟が持つ銃口から煙が立ち(のぼ)っている。

弟が男を撃ったのだ。強固な洗脳を破って。

「お姉……ちゃん……?」

瞳に感情が灯っていた。驚いた表情で、傷つき、男にのしかかられている最愛の姉を見つめている。奇跡的に記憶が蘇ったのだ。家族愛が洗脳に打ち勝った。

「ちっ!」

ボスらしき男は、横に立つ弟の顔を殴り銃を奪うと、床に転がった彼に銃口を向ける。

ダダダダッ!

無慈悲な銃弾を浴びる(からだ)が痙攣し、() 飛沫(しぶき)が上がった。