北欧三カ国回遊
シベリウス、独立への希望
フィンランド人は尚武の気風があり、覇気に富んでいるとガイドは語る。
日露戦争でロシアが負けた時は狂喜して東郷ビールなるものが後に発売された。一九一七年のロシア革命をチャンスに遂に独立した。その後もソ連やナチスドイツと小国フィンランドは抵抗をかさねたのだ。
次に元老院広場を経てヘルシンキ大聖堂へ行くと、丘の上の白亜の大ドームである。ルター派の大本山でやはりロシアを意識しているように見える。前側の階段に腰かけるとヘルシンキが一望のもとで、微風と陽光につつまれて気持ち良い。
次に訪れたのは北の郊外にあるオリンピック競技場で、七二メートルの塔が建っている。緑にかこまれたトラックのそばには長距離の王者ヌルミの像がある。この五輪が終戦直後の一九五二年にこの小国で決行されたのも大きな驚きである。
すぐ近くにシベリウス公園があり、この国の誇る大作曲家ヤン・シベリウス(一八六五~一九五七)の頭像とパイプオルガンを模したオブジェがある。シベリウスはフィンランド人のロシアに対する反抗期に最も傑作を作っている。彼は美しいバイオリン協奏曲をはじめ、七つの民族色豊かな交響曲やカレリア組曲など幾つかの管弦楽曲などを作っていて、いずれも森と湖の北方的な特長を遺憾なくそなえている。
始めはドイツやウィーンの音楽中心地では、僻地の小国の楽曲ということで無視されて、ごく最近までその傾向はあった。段々に知られてきたのはアメリカで評価されてきたからと思われる。
私見で彼の作品で感激する部分を挙げると、まず第二交響曲のフィナーレで、フィンランドの夜明けというべき感じがあり、暗闇から日の出までのクレッシェンドは鳥肌が立つくらい感動する。
私が昔、学生オーケストラ(打楽器)にいたとき演奏した「フィンランディア」はやはり夜明けのような感じで、明らかにロシア独立を願う雰囲気がただよっている。私はシンバルを担当して気分爽快だったのを覚えている。