いつものようにカリーヴルストを食べながら正嗣が切り出した。
「明日新しいスタッフが一人赴任してくるんですけど」
「どちらからいらっしゃるんですか」
「マレーシアのペナンからです。以前マニラに二年間駐在していた人なんですけど、私の二年先輩で金原っていいます」
「ああ、知っていますよ。金原さんもどってくるんですか」
丈が金原を知っているとはラッキーだ。正嗣は金原についての情報を事前に色々聞いておこうと思った。
「私はまだ会ったことがないんですけど、どんな人なんですか」
「いゃー、ちょっと変わっていますよねぇ」
「どう変っているんですか」
「何度か一緒に飲みに行ったことがあるんですけど、女の子に対して厳しいというか、冷たいというか。それが普通じゃなかったですね。女嫌いというか、もしかすると男が好きなのかも」
丈の言い方はどことなく意味深だった。
「それってオカマってことですか」
「いや、話し方や立ち居振る舞いや見た目はちゃんと男ですよ」
「じゃあ、ゲイってことですか」
「確認していませんけど、そんな風に感じたんですけどねぇ」
「部屋は別々ですけど、これから同じ屋根の下で暮らさなきゃいけないんですけど」
「楽しみですね」
「何がですか。勘弁してくださいよ。変な先入観持っちゃったじゃないですか。明日私が空港に迎えに行かなきゃならないんです」
金原という先輩スタッフのイメージが変に形成されつつある。丈の話運びからは悪意のないからかいが感じられた。