俳句・短歌 短歌 2022.03.06 短歌集「蒼龍の如く」より三首 短歌集 蒼龍の如く 【第52回】 泉 朝雄 生涯にわたって詠み続けた心震わすの命の歌。 満州からの引き揚げ、太平洋戦争、広島の原爆……。 厳しいあの時代を生き抜いた著者が 混沌とした世の中で過ごす私たちに伝える魂の叫び。 投下されしは新型爆弾被害不明とのみ声なくひしめく中に聞きをり 伝へ伝へて広島全滅の様知りぬ遮蔽して貨車報告書きゐし 擔架かつぐ者も顔より皮膚が垂れ灼けただれし兵らが貨車に乗り行く 新聞紙の束ひろげてホームに眠る中すでに屍となりしも交る 息あるは皆表情なく横たはり幾日経てなほ煤降るホーム (本文より) この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 錦江の動くともなき川面 夕映ゆる見れば遠く来にけり 梨棚の低枝つぎつぎゆれあひて 雫となりし霧は滴る いましめて燈りともさぬ納屋の内 夜深く棟木のしとる音すも
エッセイ 『カサンドラ症候群からの脱却[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 Happy Navigator 那美 妊娠4ヵ月目の裏切り......夫が会社の同僚と肉体関係を持っていた。「だってお前が、子どもを欲しがったから」 夫とは、私の会社の同僚の友人という形で知り合い、1年半のお付き合いの後、結婚しました。もちろん、幸せになるために結婚しました。子どもたちと一緒に温かい家庭を築くことが目標でした。1年半のお付き合いの中でも、私は特に彼に違和感を持つことはありませんでした。いま思えばなんですが、結婚に関して前進する手続きはすべて私がやりました。・結婚するまで二人で積立する・家具や生活用品を買う・結婚式の日取りを決め…
小説 『ダンテ、ふたたび』 【新連載】 山下 正浩 【神曲オマージュ】55歳のおっさんダンテ―!? 睡眠薬を常用し、消化器内科で治療中の彼が、再び森へ迷い込む。 この作品を、最愛の妻”典子”と娘”優希”に捧げる。いつもいつも、味方でいてくれてありがとう。本作はダンテの『神曲』地獄篇の知的なオマージュ作品……のつもりだが、パロディでもあり、ナンセンスギャグ満載である。ダンテが描いた地獄篇で主人公は三十五歳であった。それから数百年を経て、ダンテ五十五歳がふたたび森を彷徨う。すっかりオッサンになった彼は体内に悪魔を飼っているし、数百年前の地獄巡りなんてちっとも…