シートおよびルーブリック運用上の注意点

以上のプロセスを経て完成させたルーブリックを、シートとともにどのように運用しているのか。ここではこの点について見ていくことにする。

SGHおよび導入講義に関しては、毎回の講義冒頭にシートを配布する。そして、前章でも述べた通り、翌日を期限として所定の方法で回収する。※注1)その狙いは少し時間をおくことで頭の中で講義内容が整理され、まとめ作業の精度をより高めることにある。

一方、事前講義に関しては、他の講義と同様に毎回の講義冒頭にシートを配布する。そして、これも前章で述べた通り、講義の最終盤30分程度を使って要約と考えたいことについて記入させ、その場で回収する。他の講義と回収方法が異なるのは後日確実に提出させる方法を見出せなかったという技術的事情による。このことが他のシートと異なり、書く文章量が少ない結果になったと思われる。

そして、提出されたシートは図表1ないしは図表2のルーブリックにもとづいて採点される。

[図表1]ルーブリックサンプル(その1)
[図表2]ルーブリックサンプル(その2)

具体的には、各評価軸の該当する評価基準のマスに赤ペンで丸をつける。そして丸を付けた部分に該当する点数を合計して、SGHおよび導入講義は10点満点、事前講義は24点満点で点数化する。すべてのシート本体にも必要に応じて赤ペンでコメントを書き加え、導入講義とSGHについては、採点結果が記入されたルーブリックをシートにホッチキスで止めて、翌回の講義冒頭に返却している。

一方、事前講義に関してはルーブリック評価の結果が選考の参考として利用されるため、シート返却時にルーブリックを添付していない※注2)。その代わり、シートへのコメントは意識的に多く書き込むようにしている。

大学において、ミニッツペーパーなどの文章を書かせる主要な目的は出席管理にあると思われる。しかし、導入講義では出席状況把握が厳格に行える訳ではないので、受講生たちを講義に出席させる動機づけの1つとして、ルーブリックを経て計算された得点によって出席点にすると彼らに伝えている。

もし、シートが学習目標到達度を測るツール以外に出席管理ツールとしても活用するのであれば、講義時間外に(学生間で)コピーなどでシートが流通されることを避けなければならない。

そこで、導入講義のシートは毎回色の異なる上質紙で印刷して流用を回避している。なお、SGHと事前講義については授業の段階で出席管理しているから、受講する生徒の出席状況の把握に神経をとがらせる必要はなかった。