ルーブリック評価軸および評価基準の具体例

大学の授業は原則的に半年ないしは1年を時間的区切りにして開講される※注1)とができる。

しかし、授業を通じて学生に身につけさせるスキルが反復トレーニングを伴うものであれば、開講期間を通じた評価軸から毎回の授業時間における評価軸に時間視野を短くすることができる。こうして、授業ごとに行う作業に対するルーブリックとしての短期ルーブリックが形成される。私が使用しているルーブリックもこれに該当する。

そこで、以下では私が実際に使用しているルーブリックを紹介するとともに、それを使用した実践上の留意事項などについて指摘する。

私がルーブリック評価を実践した授業は、前章で紹介したシートを活用したもの、すなわちSGH、事前講義および導入講義である。これらの共通項は講義内容が一話で完結するものであり、過去の講義を聞かなければ太刀打ちできない内容にはなっていないことである。

無論、熟慮すればその中で通底する学習目標は見出せたであろう。しかし、SGHと事前講義は高校生が受講対象だから、学問の体系性を本格的に教授するには予備知識が少なすぎる。

一方、導入講義では本学の専任教員が入れ替わり立ち替わり自分の専門領域をフリーに語るから、内容面での共通項が見出しにくい。そこで、高校生に対しては「大学入学以降も必要になる基本スキルは何か?」、本学の学生に対しては「実社会に出たときにも必要になる基本スキルは何か?」という観点で考えた結果、私はこれらの講義の目的を「学生・生徒の〈聞く〉〈メモを取る〉〈まとめる〉という3つのスキルを養成する」と設定した。これが図表1左側の第1段階にあたる。

[図表1]ルーブリック作成手続き

これを踏まえて、第2段階の学習目標リストの策定を行った。これについては前章の冒頭で示したこと、すなわち、

①この講義でどんな話をしていたか?

②この講義でどこが印象に残ったか?

③この講義からイメージを膨らませてみると……?

を主要な学習目標リストとした。一話完結の内容で〈聞く〉〈メモを取る〉〈まとめる〉作業を短い期間で完成させることを考えれば、このリストの内容で妥当だろう。