1)スタチン系薬の制酸剤とイオン交換樹脂との相互作用
スタチン系薬とは、肝臓にあるHMG-CoA還元酵素を阻害してコレステロールの合成を阻害する薬です。脂質異常症の代表的な高LDL血症の治療薬になりますが、肝臓でコレステロール合成阻害だけでは血中のLDL量を減らすことはできません。第1章でも紹介しましたが、しつこく説明します。肝臓のコレステロールが少なくなると、血液中で多くのコレステロールを含むLDLと呼ばれるリポタンパク質(世間的には悪玉コレステロール)を肝臓内に取り込むためのLDL受容体を肝臓内でたくさん合成し始め、血管と接触する肝臓細胞表面にその受容体を集結させて、血液中のLDLを肝臓内に取り込み、肝臓で不足していたコレステロールを補うという工程があります。
これにより血液中の悪玉コレステロールであるLDL量が減少して、結果的に動脈硬化などの人の命に関わる病気を防ぐ役割を果たしてくれます。
現在、スタチン系薬は6種類が販売されていますが、その相互作用で、胃酸を中和してくれる薬(いわゆる制酸剤で、その中でも水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムの配合薬)と同時に服用すると血中濃度が半分になってしまう薬があります。それはロスバスタチン(先発薬:クレストールⓇ)なのですが、他の5種類のスタチン系薬には併用に関する注意がありません。その他の相互作用では、スタチン系薬と同様に血液中のコレステロール値を下げる作用のある陰イオン交換樹脂薬と併用すると、3種類のスタチン系薬の作用が弱まるとあります。
6種類のスタチン系薬の構造はよく似ているにもかかわらず、この相互作用のあるなしの違いはどこからくるのでしょうか?