カラスの夢
「神秘の目……って。聞いたことがないなぁ……」とフォールはつぶやきました。するとエムが笑みを含んだ声で言いました。「聞いたことあるさ! 第三の目とも言うがね」
フォールには、エムの悪戯っぽい笑顔が見えるような気がしました。エムは一拍置いて笑いながら、続けました。「フム、第三の目……第四の……第五の……人間は数えるのが好きだねぇ……」
フォールは啞然としてしまいました。「えぇっ? 冗談を言ってるんですか?」「宇宙のジョークだよ。フォール、宇宙のね。宇宙のジョークは『不可算』だよ」そう言って、エムはクスッと笑いました。フォールも、まさか天使がこんな冗談を言うなんてと、思わず笑ってしまいました。
エムはかまわず続けました。「これがお前を、次の別次元への旅に連れて行ってくれるよ。神秘の目は、明晰にものを見るのを助けてくれ、インターディメンショナルな旅に不可欠のものとなる。神秘の目は、霊の扉なのだ」
「じゃあ、ぼくはまた別の旅に出るの?」フォールは恐るおそる尋ねました。「そうだね。次に進む時が来たんだね。前方か内側にね……そうだろう? お前はいいよって言ったじゃないか、忘れたのかね?」
「もちろん覚えています。至高の神さまは、そのことでぼくを褒めてくださいました」フォールは頬を赤らめて答えました。「忘れるはずがありません!」
「あれは本当に勇気ある決断だった。大したものだよ。準備はいいかい?」
「準備?? エムさま、ぼくいつまで経っても準備はできないから、どうせなら、今日でもいいさ」
フォールは心を奮い立たせました。今では、他の次元へのシフトがどれほど素晴らしく、しかも同時に恐ろしいものであるかを、彼はこれまでの体験から知っていました。「あんな」スゴイことに準備OKのはずがありませんでした。でも、決めたのです。起こるがままにしてみようと。
その時、またもやフォールの注意は別のことに向けられていました。どうしても訊きたいことがあったのです。彼は単刀直入に尋ねました。