「エムさま、あの神秘的な目をしていたカラスですけど、怪我をしていたのでしょうか? どうして、羽がちぎれていたの?」
「あぁ、あのちぎれた羽のことだね。よく気が付いたね。あれは、お前のトラウマの一部だ。トラウマは癒してやらなければならない。全体的であるために、もう一度完全になるために。傷つけられたり、いじめられたりした時、悲しみや罪の意識、恥ずかしさや後悔に苛まれている時、お前の一部は失われている。喪失を体験して、癒しを求めているのだ。
人間の世界では、そのことを『魂の回復』と呼ぶ。だが、魂それ自体は回復される必要がない。魂は『ひとつ』であり『永遠』だからだ。それは、喪失からの回復と言ってもいいし、もしくは、お前自身の、この世で、あるいは過去生で否定された部分の回復なのだよ。
お前が窓の外に向かって腕を伸ばした時、お前はそれに気が付いた。そして、再び呼び戻したのだよ。完全にするためにね」
「あぁ、そうか。だから、ぼくは彼らに親近感を抱いたんだ!」とフォールは叫びました。「ぼくは、何とも言えない親しみを感じていたけど、あれは、ぼくの一部だったからなんですね?」
「そうだよ。お前は『それ』を招き入れたのだ。和解と再統合をもたらしたのだよ。『魂』にとって、なんと幸せな瞬間だったことだろう! 魂がどれほど感謝し、喜んでいたかを覚えておおき!」
そう言うと、エムは去っていきました。フォールは、眉間にしわを寄せながら、大きく深呼吸しました。これからも「あのような」旅は続くと、エムはハッキリ言っていました。フォールは勇ましい返事をしたのでしたが、心の中では、「今度はどこへ行ってしまうんだろう?」と不安に思っていました。
そう思うと、またもや、気持ちは高揚感と躊躇いの間を、興奮と心配の間を揺れ動いてしまうのでした。まだまだたくさんの質問が彼の探究心をくすぐっていたのですが、答えが見つかるかどうかは、全くわかりませんでした。
数日が過ぎ、美しい満月が空から窓の上にぶら下がっているかのような夜のことでした。彼は、いつしか眠りに落ち、一筋の月明かりが彼の顔を照らしていました。
その夜、彼は思いもよらぬ体験をしたのでした。