ノーマンズランド(彼我の中間地帯)の夢
フォールは、パナマ海峡の上空と思しき場所を飛んでいました。太平洋から大西洋に向かっている感じでした。海峡は、河底が半分干上がったように見えました。
上空からは、黒い大型の金属船が数隻、干上がった砂地に点在する水辺をやっと航行しようとしているのが見えました。
全く干上がった場所では、その黒の船団は、巨大な機械に括りつけられた何本もの鉄のワイヤーで引っ張られなくてはなりませんでした。
戸惑いながら、その成り行きを上から見ていたフォールは不思議でたまりませんでした。どうして、この船団は、南米周りにしないで、こんな干上がった国土を通過しようとするんだろう?
すると、答えが頭の中で響いてきました。どんなに大変でも、大陸を回るよりは近道なのだと誰かがテレパシーで伝えてくれたのでした。
景色が変わり、彼はこの干上がった運河の真ん中を歩いていました。それは運河というよりも、幅の広い砂泥道路のようでした。彼は自分がここで何をしようとしているのかわかりませんでしたが、歩き続けていると、検問所に差し掛かり、そこには、カーキ色のバミューダパンツを履いた大柄の黒人兵士たちが、大型の銃を持って立っていました。彼らはどこか意地悪そうで、危険な雰囲気を漂わせていました。
どういうわけかこの時、フォールは自分が一体どこにいるのかという疑問も持たず、平然と歩き続けました。
彼は立ち止まって、辺りを見回しました。検問所のわずか数メートル先に、砂泥道路の大きな交差点が見え、彼のいるところから30~40メートルのところでしょうか、一台の古いトラックが発進しようとしていました。
彼がそのトラックと同じ方向に二~三歩踏み出すと、足元に新鮮な紫色に輝く美味しそうなナスが目に留まりました。
目を上げると、そこにも、その向こうにもナスが落ちていて、それは50~60センチおきに自分の目の前に一直線に続いているのでした。
あのトラックから落ちたんだとわかりました。見事な紫色のナスが、まるでついてこいと言わんばかりに、熟した果実のように目の前に一個ずつ置かれているのでした。
彼は何個か拾って、両手が一杯になったので、目を上げると、驚いたことに、何人かの兵士たちがトラックの後を追いかけているのが見えました。兵士たちはトラックを制止し、運転手をまるで囚人でも扱うかのように、外に引きずり下ろしました。フォールは不思議に思いました。
「どうして? ナスを落っことしただけなのに??」